<ラグビー流 Education(16)>

ラグビー元日本代表の今泉清氏(52)が、子どもや部下との信頼関係を築くためのヒントなどについて語ります。

日頃からの積み重ねが大事

チームワークなど人間関係を支える「信頼」。

今泉 まず「相手の話を最後まで聞く」ことが大事だと思います。例えば部下が上司に、子どもが大人に何か相談した時、経験に勝る方が話を途中で遮って「そういう時はこうすればいい」と、結論を急いでしまうことがある。それでは相手の考え方も理解しきれないし、本人は話す気も、自主性もなくしてしまう。

円陣を組んでチームトークを行うラグビーW杯日本代表。共通認識や信頼が最強の組織を生む
円陣を組んでチームトークを行うラグビーW杯日本代表。共通認識や信頼が最強の組織を生む

一方通行になりがちだ。

今泉 「理解する」は英語で「understand」。日本語では「理解してあげる」など上から目線の印象でも、英語では「その下に立って(分からせていただく)」という姿勢。その意識を変えないと、世代差がある場合は難しい。特に若い人とは…。

相互理解があれば、難局を乗り切るスピードが変わる。ラグビーの試合中、わずかの時間に円陣をつくっての「チームトーク」。

今泉清氏
今泉清氏

今泉 日本語では結論が最後にくるから「相手はこちらのキックを研究し、警戒して、こんな陣容を敷いている。だから、ボールを回していこう」となる。この途中で「そうかな?」と声が入れば、話は長くなってまとまりにくい。共通認識や信頼があれば、結論から「回そう!」のひと言ですむ。状況に対して、思い描く次のプレーが統一されている。最強の組織「ONE TEAM ONE HEART」です。

日頃培った信頼が勝負を左右する。

◆今泉清(いまいずみ・きよし)1967年(昭42)生まれ、大分市出身。6歳でラグビーを始め、大分舞鶴高から早大に進み、主にFBとしてプレースキックなどで大学選手権2回優勝、87年度日本選手権優勝に貢献。ニュージーランド留学後、サントリー入り。95年ワールドカップ日本代表、キャップ8。01年に引退した後は早大などの指導、日刊スポーツなどでの評論・解説、講演など幅広く活躍。

(2019年12月22日、ニッカンスポーツ・コム掲載)