<ラグビー流 Education(15)>

名門・桐蔭学園高(神奈川)を率いる藤原秀之監督(51)は、ジュニア世代、子育て世代、指導者へ、集中力を育むべく“熱中時代のススメ”を提唱します。

時間を忘れて夢中になる経験が大事

いわゆる「ゾーン」「フロー」と呼ばれる高度の集中状態。それを培うヒントが子ども時代の「熱中」「夢中」にあるのではないかと、藤原氏は話す。

藤原 あくまで仮説ですが、近年は食事でいう「腹八分目」。すべてに対し、大人はやり過ぎないように注意するし、子どもはどこかでブレーキをかける傾向にあります。もちろん悪いことではありません。ただ、それが習慣になってしまって、「熱中して何かをやりきる」という経験が少ないのかな、と感じます。

藤原秀之監督

いわゆる「寝食を忘れて、時間を忘れて夢中になる」は、子どもなりの集中状態だろう。

藤原 そういう経験がある子は、その後の人生でも自分が興味のあるものにグッと(集中して)入り込む。大人になっても入り込めるでしょう。危ないこと、悪いことでなければ、とことんやらせる時期があってもいいと思います。

夢中になったのが遊びでもスポーツでも、「集中してやりきる」ことは、勉強や社会に出ての仕事ぶりに通じる可能性がある。一方、無意識にブレーキをかける習慣だと…。

藤原 ちょっとかじってやめる、を繰り返す「広く浅く」です。いい面もあるでしょうけど、最終的に「器用貧乏」になってしまう懸念もあります。

桐蔭学園高で3年間ラグビーをやりきった教え子の中には受験に失敗する者もいた。それでも「浪人中が最も勉強した」と本人が実感するほど打ち込み、高みを目指す姿も見てきた。

藤原 「大学受験を失敗したと思ったけど、この1年、集中して勉強することによって、自分を見直すことができました」と言うんです。大したものだと思いました。浪人はしたけど、また頑張れる力が出てくる。これは本人の将来にとっても大きいでしょう。

子どもの時に熱中して何かをやりきる経験が、勉強や社会に出ての仕事ぶりに通じる可能性がある

メンタルコーチによれば、例えば電子ゲームで「ゾーン」に入るのは、クリアできそうでできなかった場面をクリアする直前だという。自分の限界だと思っていた地点を超える直前。

藤原 個人差はあるけれど、そういう感覚が大事だと思います。

対象はスポーツでも勉強でも習い事でも趣味でもいい。いわば「熱中」「夢中」は成長や進歩の兆しともいえよう。

◆藤原秀之(ふじわら・ひでゆき)1968年(昭43)東京生まれ。大東大第一高でラグビーを始め、85年度全国選手権でWTBとして優勝。日体大に進む。卒業後の90年に桐蔭学園高で保健体育の教員、ラグビー部のコーチとなり、02年から監督。同部は本年度で5大会連続18度目の全国選手権出場に。決勝進出6回、10年度優勝時のメンバーに日本代表の松島幸太朗ら。今や「東の横綱」と呼ばれている。

(2019年12月22日、ニッカンスポーツ・コム掲載)