<ラグビー流 Education(1)>

ラグビーワールドカップ(W杯)が盛り上がった2019年。W杯をきっかけにラグビーに興味を持ったジュニアも多いはず。では、どうしたら子どもをラグビーに親しませることができるのか。元日本代表の今泉清氏(52)はラグビーへの導入として「タグラグビー」を推奨、小学校などで指導しています。また、高校ラグビーの名門・桐蔭学園(神奈川)を率いる藤原秀之監督(51)は遊び感覚で楕円(だえん)球に慣れることを勧めます。(以下敬称略)

楽しさと爽快感味わえる

W杯では大男たちによる迫力ある肉弾戦が繰り広げられ、特に恐怖心を乗り越えて相手に向かうタックルは、見る者の心を揺さぶります。でも、ラグビーに興味を抱いた子どもに、すぐにタックルを教えるというのは時期尚早です。

今泉 体ができていない子どもはバランスがとれないので、ケガにつながりかねない。基本的に日本では8歳から接触プレーが許されていますが、ニュージーランドではタックルは10歳以上と指導しています。

そこで、タックルなしでラグビーを体感できるのがタグラグビーだ。今泉氏は9月に横浜市・浅間台小でラグビー教室を行った。W杯開催を契機にスポーツへの関心を高めてもらうため、横浜市西区の地域振興課が企画したもの。実技編では5年生を対象にタグラグビーを指導した。

タグラグビーは、全員が「タグ」と呼ばれる帯状の布を左右の腰につけ、これを奪うのがタックル代わりになる。タグを奪われた選手は止まって、球をパスしなければならない。走ってボールをつないで、ゴールラインまでボールを運べばトライとなる。前方にパスしてはいけないスローフォワードはあるが、スクラムはなし。相手をつかむ、ぶつかるなどの身体接触は禁止されており、安全に楽しめるというものだ。

タグラグビーを楽しむ子どもたち=2019年9月5日
タグラグビーを楽しむ子どもたち=2019年9月5日

今泉 相手に当たることではなく、まず走って相手を抜くステップを覚えてほしいですね。その楽しさと爽快感を知ってほしい。

最初こそ楕円球に戸惑う児童もいたが、時間がたつにつれて慣れ、ボールを持った子の後ろを走ってパスを受ける動きもできるようになった。今泉氏は審判しながら、誰にパスを出したら効果的か、流れの中で声をかけ続けた。

今泉 球を前に投げられないので、多くの子がボールに触れられる。その中でも積極性など個人差はあるので、なかなかボールをもらえない子にパスが渡るように、僕が誘導することもある。できるだけ全員が球に触れられるように。

20分もすると、児童同士で声を掛け合ってボールをつなぐようになったり、休憩時間に作戦を考えだしたりする姿もみられた。

今泉 小学生は3回くらい教えれば、すっかり覚えますね。女子の方がよく質問したり、声を出したりして、覚えが早いこともあります。グラウンドだけでなく、フットサル場や体育館などでもできます。

1時間弱の指導を受けた児童たちはよほど楽しかったらしく、最後は今泉氏に「また、来てください!」と熱心に頼んでいた。

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