効果的に食トレに取り組むためには目的を明確にした「意識づけ」と、そのための「行動変容」のきっかけ作りが重要です。

例えば、「リカバリーのため」に「練習後にチームでおにぎりを準備する」と決めて取り組むとします。ここで重要となるのは、練習時に消耗した筋グリコーゲンを、回復率が高い運動直後に糖質をとって急速なリカバリーにつなげること。このタイミングの重要性をチームや選手が意識できていないと、着替えや片付けが先になって食べるのが30分以上過ぎてしまったり、帰宅後に食べることになってしまったりして効果的なタイミングを逃してしまい、目的を最大限に得られなくなります。

効果的な食トレの実践につながった事例

今回は、効果的な食トレの実践につながったチームの事例を紹介します。

(1)高校ボート部

冬はトレーニング期となり、フィジカル強化を目的にトレーニングに取り組みます。その期間に入る前に、指導者である教員が栄養セミナーを計画し、目的とトレーニングに合わせた栄養補給についての意識づけを行いました。

セミナー後、練習日誌やアプリを活用した記録を行いながらトレーニング実施状況を「見える化」し、行動変容を促して継続的に取り組んだ結果、目的だったフィジカルの強化に成功。シーズンとなる夏に戦うための体ができ、ライバルとの接戦を制してインターハイ出場を果たすことができました。

(2)高校女子ソフトテニス部

チームの課題に、「普段から食への意識が足りない」「しっかり食べられていない」「練習も十分に追い込むことができない」があり、栄養セミナーの相談がありました。冬休み期間の1日最大3部練習をする追い込み合宿の序盤で計画されたので、合宿を乗り越えるための栄養補給をテーマに、すぐに生かせる情報を伝えて、食べることへの意識づけを促しました。

その結果、合宿期間中は同じ食事を一緒にとるため、チーム全体でしっかり食べるという行動変容になり、結果として最後まで追い込むことができたということでした。またこの合宿を振り返り、「チームで練習後の補食を取り入れていく」という次の意識づけと行動変容のきっかけにもつながったといいます。

「できた」の自信から継続的な実践に

どちらの事例も、目的に取り組む前に栄養セミナーで「意識づけ」し、その流れのままチームで取り組んだことが自然と「行動変容」につながっています。セミナーを実施するタイミングもそれぞれ良かったことで、効果的な食トレになりました。取り組んだことに結果が伴うという経験は、チームとしてはもちろん、選手個々でも「できた」という自己効力感や達成感を得て、今後の継続的な実践につながることが期待できます。

食トレはやみくもに取り組むものではありません。意識づけから行動変容につながるように効果的なタイミングで学びを取り入れ、チーム、選手、そして保護者とも連携しながら、目的とする結果が出るように計画的に実践しましょう!

今回紹介するレシピは、「両棒餅(ぢゃんぼもち)」です。餅に2本の串がさしてあるのが特徴的な鹿児島の郷土料理です。

一口サイズのお餅にしょうゆだれやみそだれをかけて食べるもので、簡単に作れます。ジャンボでないのに「両棒(ぢゃんぼ)」というのは、鹿児島の方言で「武士の大小の刀」を意味し、2本の串を刀に見立てて名付けられたものだから。トレーニング期・増量期のエネルギーアップ補食にもおすすめです。お正月に残ったお餅でぜひ作ってみてください。

KAGOSHIMA食×スポーツ/管理栄養士・田畑綾美