<イップスって何?(30)>

「ベースボール・コーチングアカデミー」で校長を務める寺澤恒氏(51)は、かつて大声で怒鳴る指導をしていました。ただ、UCLAの指導者から「日本の指導はマフィア」と指摘されました。

寺澤氏 最初は反感を持ったが、頭には残っていた。その後、もう1つ練習がしっくり来ない時期がきました。なかなか成果が出ない。そのときにアメリカでの言葉がよみがえって方針を変えた。大声や叱責(しっせき)ではなく、いかに選手の能力を引き出すか考えるようになりました。

具体的な変化とは。

寺澤氏 例えば集合をかけるときも、私は小声で「集合」と言うだけ。聞こえた者が仲間に伝えればいい。「中継プレーにも生きるよ」「野球は伝言ゲームだよ」と話した。叱るより選手は動くようになった。納得するからでしょうね。

選手が変わりました。

寺澤氏 雨の日に選手が「あーあ、今日も外で練習できないな」と言った。それまでは「ラッキー。休める」だったのに、本気で残念がっている。これが本当の指導かなと。そこでマフィア野球を脱しました。

アカデミーを通じ、自身の体験を踏まえながら「怒鳴らない指導」を広めています。動画を公開したり全国で講習会を実施しています。その経験に基づき、イップスについて語ってもらいました。【飯島智則】