<イップスって何?(6)>

トレーニングサポート研究所の松尾明氏(48)が、イップスに悩む大学生のA君を指導する場面に立ち会いました。A君は2度目のレッスン。最初に指導を受けてから1カ月は調子がよかったが、再び違和感が出てしまったといいます。

レッスン前に松尾氏がいくつか質問すると、ウエートトレーニングで疲れた状態でキャッチボールをしていたと分かりました。松尾氏は「疲労状態でキャッチボールをすると感覚が鈍る。それを手先で修正しようとすると混乱するからね。ウエートの前、または時間を置いてからの方がいい」と助言しました。

キャッチボールを始めると、A君のフォームはテークバックからトップへ動いていきません。1度止まり、その後は動きがギクシャクしてしまいます。止まった腕を無理やりトップへ持っていくような、明らかに不自然なフォームでした。しかし、松尾氏はその点に言及せず、暴投があっても「OK。OK。いいよ」と言って続けました。

しばらく後、松尾氏は「足を上げた時の体幹を保ったまま投げた時はいい球がいっている。A君の場合は、上げた足が地面に着いた時、重心位置が大きくズレてしまう。投球がおかしくなるのは、このパターンが多いんだよ」と説明しました。そして、撮影のためにスマートフォンを設置していた三脚を指さしました。【飯島智則】