魚の骨が口や喉に刺さる事故は4歳以下の幼児に多いことがこのたび、東北大学が発表した研究結果によって分かった。特にカレイやヒラメの骨は下咽頭や食道に刺さることが多く、手術が必要になることが多いという。

魚の骨が口や喉に刺さってしまう疾患は「魚骨異物」と呼ばれる。魚骨異物は、日本などの魚消費量が多い国では一般的な疾患だが、詳しい調査はあまり行われておらず、魚の種類によって骨の刺さり方や頻度が変わるかどうかは明らかになっていなかったという。

魚骨による咽頭、食道異物
魚骨による咽頭、食道異物

そこで、東北大学大学院医学系研究科の耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野、香取幸夫教授らのグループは、魚骨異物疑いで東北大学病院を受診した患者の詳しい調査を行った。2015年10月から2020年5月までに魚骨異物の疑いで受診した患者は368例。そのうち医師が異物を確認した270例(74.3%)を対象に分析した。

患者の年齢は乳幼児が最も多く、0~4歳が全体の25.9%を占めた。骨が刺さっていた部分は口蓋垂(こうがいすい、いわゆる「のどちんこ」)から舌根(舌の付け根の部分)にかけての中咽頭領域が87.4%と大多数を占め、特に口蓋扁桃(いわゆる「扁桃腺」)に刺さっている症例が多かった。

魚骨異物症例の年齢分布は、小児と中高年にピークがあり、特に4歳以下の幼児症例が多かった
魚骨異物症例の年齢分布は、小児と中高年にピークがあり、特に4歳以下の幼児症例が多かった

魚の種類は、ウナギの仲間(ウナギ34例、アナゴ3例、ハモ2例)が14.4%と最も多く、サバが12.2%(33例)、サーモンが12.2%(33例)、アジが11.1%(30例)、カレイの仲間(カレイ28例、ヒラメ2例)が11.1%と続いた。ウナギを除いては家庭での生鮮魚介消費量の多い魚が主な原因となっていた。

魚種ごとの魚骨異物の摘出方法を見ると、魚骨異物はウナギやサバで多かったが、カレイやヒラメは内視鏡下摘出術や手術を要する割合が他の魚と比較し高かった
魚種ごとの魚骨異物の摘出方法を見ると、魚骨異物はウナギやサバで多かったが、カレイやヒラメは内視鏡下摘出術や手術を要する割合が他の魚と比較し高かった

魚骨異物を確認した270例のうち、診察中に骨が自然に脱落したのは12.2%(30例)、残りの240例で摘出術が行われた。口腔から直接摘出したのは54.6%(131例)で、内視鏡下での摘出手術が42.9%(103例)、全身麻酔下の手術も2.5%(6例)あった。12歳以下の小児例は139例で、中咽頭領域に骨が刺さっていた症例が99.3%(138例)を占め、内視鏡下摘出術を要した症例は22.3%(31例)だった。

さまざまな魚の種類の中でカレイやヒラメの骨は、下咽頭や食道に骨が刺さる頻度が30%と高く、自然に脱落する頻度が9.1%と少なく、内視鏡下摘出術や全身麻酔下での手術が必要になる症例が65.5%と多いという結果になった。つまり、口の中に骨が刺さりやすいのはウナギやサバ。カレイやヒラメの骨は刺さると取れにくく、内視鏡下摘出術や手術を要する割合が高くなるという実態が分かった。