<五輪を楽しむキーワード(4)>

4回目はバレーボール編。バレーボールは迫力あるスパイクに目が行きがちだが、守備にも見どころは多い。リベロとして活躍し、今季現役引退した元男子日本代表の古賀幸一郎さん(36)に、ディフェンスの用語を中心に解説してもらった。【取材・構成=平山連】

Vリーグ女子1部NECを訪れ、指導に当たる元男子日本代表リベロの古賀さん(撮影・平山連)

古賀さんはVリーグで計6度のサーブレシーブ賞や、6季連続でベストリベロ賞を獲得。守備へのこだわりは強く「得点競技だから間違いなく攻撃が大事ですが、より良い攻撃にはより良い守備が欠かせないんです」と指摘する。

レシーブは主に2種類ある。サーブを受ける「レセプション」と、スパイクを受ける「ディグ」だ。

レセプション

サーブレシーブのこと。直訳すると「歓迎会」「受付」だが、海外からバレーボール用語として広まった。Vリーグなどでは選手や監督が試合後のインタビュー、会見などでよく口にする。知っておくと、テレビ観戦の際に役に立つ。

古賀さんは「プロの間で『サーブレシーブ』を使うことはほとんどなかったですね」と振り返る。自身も学生時代は「サーブレシーブ」を使うことがほとんどだったが、大学卒業後にVリーグでプレーすると用語の使い方が変わってきたという。「外国人監督や選手と話し合ううちに『レセプション』を使う頻度が増えましたが、ママさんバレーや子どもたちに教える時は『サーブレシーブ』と使い分けていましたね」と説明した。

果たして公式用語は「レセプション」なのか「サーブレシーブ」なのか? 日本協会は「レセプション」について「一般的にはわかりづらい。一般に知られ、トップレベルでも普通に使用されている『サーブレシーブ』に統一する」としている。現場と協会で、ややずれが生じているようだ。

古賀さんは、レセプションについて「相手との駆け引きができるのが『ディグ(後述)』との大きな違い」と指摘する。9メートル四方のコートを6人で分担して守る中、どうやったら自分の守備範囲にボールを呼び込めるか。相手の顔色やしぐさ、アナリストからのデータ分析などフル活用し、どこにボールが来るかを予測するという。

レシーブする内瀬戸真実

ディグ

スパイク、アタックを受けること。一説には掘る(dig)動作に似ていることから名付けられた。古賀さんは「ボールが床に落ちなければ失点しないのがバレーボール。シンプルに拾うことだけを念頭に置くと、どんな受け方でもいい」と柔軟だ。

サーブレシーブと比べて駆け引きがしづらく、守備する上でブロッカーとの意思疎通が肝心。現役時代に考えていたことは失点を覚悟するギブアップボールと、チャンスボールを見極めること。鋭角に放たれた強打は、どんなに頑張っても取れない時は取れないと諦める。代わりに後者をしっかりと拾い、思い描いた攻撃につなげる。

レシーブする井上琴絵

リベロ

レシーブのみを行うスペシャリストで、後衛の位置の選手と審判の許可なく交代できる。イタリア語で「自由」を意味する。他の選手と異なるユニホームを着てプレーし、1998年から国際ルールで認められた。五輪では2000年シドニー大会から採用された。

コートに自由に出入りすることができるので、試合中は監督の意思をコートに反映させる役割も担う。古賀さんは「(リベロは)スパイクを打てないので得点を取ることはできないけど、コート内外でできることを探そうとするとたくさんある」と守備の魅力を説明した。

レシーブする浅野博亮

バレーボールの試合を読み解く上で、データ分析が活発化している。選手個々の得点、ミス、ブロック、レシーブなど細分化した記録の中で、古賀さんが最も重視したのは「アタック効果率」だ。

アタック効果率

アタックの決定数-失点(アタックミス数+被ブロック数)÷打数×100で算出される確率で、「試合の勝敗に直結する数値」(古賀さん)。

例えばVリーグの今季プレーオフ男子1部準決勝。試合は名古屋が3-1でパナソニックに勝ち、1勝1敗(アドバンテージ含む)で並び、1セット制のゴールデンセットはパナソニックが勝った。試合全体の効果率は、名古屋の49%に対し、パナソニックが38%。ゴールデンセットでは、名古屋が41%、パナソニックが70%。パナソニックが、最後に意地を見せたことがデータからも明らかだ。

古賀さんは「試合中はアナリストが選手別に効果率など細かく出してくれます。それを見ながら攻め方を変えていく。データバレーを知っていると、試合後にまた新しい発見があるで楽しいです」と話した。

◆古賀幸一郎(こが・こういちろう)1984年(昭59)8月30日生まれ、長崎県佐世保市出身。佐世保北高卒業後、国際武道大でリベロにコンバート。NEC、豊田合成(現名古屋)で活躍。21年春に現役引退。同じポジションでプレーする弟の太一郎(31=東京)は、東京五輪代表候補に名を連ねている。

五輪へバレーボール協会用語を統一

日本バレーボール協会は18年に競技の統一用語を発表し、東京五輪に向けて混在を避けるために用語整理した。「使用を推奨する、、推奨しない統一用語」や「併用する、しない用語」に分けて役割や技術を細かく定義した。

◎フロントロー、バックロー
△前衛、後衛
伝統的に日本では前衛、後衛と言われてきたが、将来的には「フロントロー、バックロー」を主流にする。

◎チャンスボール
×フリーボール
強打ではなく、威力がない緩いボール。「フリーボール」は使用しない。

◎ブロックフォロー
×ブロックカバー、スパイクカバー
スパイクがはじかれた時にサポートに回り、レシーブすること。ブロックカバー、スパイクカバーは使用しない。

○スパイカー
○アタッカー
ジャンプして攻撃する選手のこと。こちらは2つを併用する。

○レシーバー
○ディガー
レシーブをする人を指す。戦略的に呼称が変わるため、併用する。

◎リリーフサーバー
×ピンチサーバー
試合途中にコートに入るサーバー。「ピンチサーバー」は使わない。

◎リリーフレシーバー
×ピンチレシーバー
守備強化で試合途中にコートに入る選手。「ピンチレシーバー」は適さない。

◎アウトサイドヒッター、スパイカー
×ウイングスパイカー、サイドアタッカー
アタッカーの役割の呼称。「ウイングスパイカー」、「サイドアタッカー」は使わない。

◎タッチネット
×ネットタッチ
手や体がネット当たること。「ネットタッチ」は使わない。

◎ダブルコンタクト
×ドリブル
1人の選手が2回連続でボールに触れること。ドリブルとは言わない。

◎キャッチ
×ホールディング
ボールをつかんだり、投げたりすること。「ホールディング」ではなく、ルール用語に従って「キャッチ」を推奨する。

◎=推奨する用語
○=併用してよい用語
△=推奨しない用語
×=適さない用語

(2021年4月30日、ニッカンスポーツ・コム掲載)