<五輪を楽しむキーワード(3)>

3回目はバドミントン編。トッププレーヤーたちは高い打点から強く打ち下ろすスマッシュ以外にも、多彩なショットを繰り出して相手から得点を奪う。日本代表としてオリンピック2大会出場の池田信太郎さん(40)のコメントも交えながら、さまざまなショットの特徴や、独特のバドミントン用語を解説する。【取材・構成=奥岡幹浩】

全日本総合バドミントン選手権大会 男子シングルス決勝 桃田賢斗対西本拳太 西本拳太に勝ち連覇を達成した桃田賢斗は雄たけびを上げる=2019年12月1日
全日本総合バドミントン選手権大会 男子シングルス決勝 桃田賢斗対西本拳太 西本拳太に勝ち連覇を達成した桃田賢斗は雄たけびを上げる=2019年12月1日

◆ヘアピン
ネット際に落とされた球を、相手のネット際へと返すショット。シャトルの軌道が髪の毛を留めるヘアピンに似ていることからこう呼ばれる。日本代表の桃田賢斗も得意としているショットで、守りから攻めへと転じる起点や得点を奪う決め球にもなる。「ただネット際に落としているように見えても、実は羽根ではなくコルクを打っている。シャトルがクルクルと回転している中で、タイミングよくコルクを捉えないと、きれいに返りません」(池田さん)。逆サイドに返すクロスヘアピンも存在する。

◆ドロップおよびカット
いずれもネット際に球を落とすショット。ふわりとした軌道のドロップに対し、カットはラケットの面を斜めにして振り抜き、鋭角に落とす。使い分けのポイントについて池田さんは「シングルスでは打ち終わった後、コート中央に戻るのがバドミントンの基本。テニスや卓球と違い、そうしなければ効率的に動けない。自分に余裕があれば速いカットで攻める。そうじゃないときは、ドロップでつないで自分が戻る時間を稼ぎ、次のプレーに備えます」。

◆ロブ(ロビング)およびプッシュ
いずれもネット際から放たれる。「ロブは下から大きく上げて、自分の体勢を整える狙いがあります。一方のプッシュは、ネット前に来た甘い球を鋭くたたく攻撃的なショットです」(池田さん)。軌道自体はクリア(ハイクリア)と同じようにも見えるロブだが、「アンダーハンド」で「ネット際」から繰り出されるのが特徴となる。

バドミントンのショット
バドミントンのショット

◆クリア
相手コートの奥へと飛んでいくショットで、身体を大きく使って上から打つ。ハイクリア(高い弾道)とドリブンクリア(低い弾道)に分けられる。遠くへ飛ばす球をうまく活用することで、自身の体勢を立て直して次の攻撃につなげることができる。バックハンドで高く放つハイバックは、さまざまなショットのなかでも難易度が高いとされる。

◆サイドバイサイドおよびトップアンドバック
ダブルスの試合中における2人の並び方。横に並ぶサイドバイサイドは守備時、縦に並ぶトップアンドバックは攻撃時の陣形。攻撃を行っている際は前衛の選手がゲームメークする役割を担い、後衛の選手がアタックを繰り出す。

◆ドライブ
床と平行するような弾道で、ネットすれすれの高さを飛んでいく速いショット。ダブルスで使われることが多いが、「次のプレーを予測するのがうまいギンティン(インドネシア)のような選手は、シングルスでもドライブなど速くて低い球を多用して相手のポジションをずらすのが得意」(池田さん)。

◆「セット」とは呼ばない
バドミントンには「セット」という言葉はなく、「ゲーム」と呼ぶ。試合(マッチ)は3ゲームで構成され、2ゲーム先取したほうが勝ち。サーブ権の有無にかかわらず点数が入るラリーポイント制が採用され、1つのゲームはどちらかが21点を取れば終了。20-20となった場合は延長戦となり、2点差がつくか、30点に到達するまで続行される。各ゲームとも、どちらかが11点に到達した時点で60秒以内のインターバルに入る。

バドミントン元日本代表で、五輪2大会に出場した池田信太郎さん
バドミントン元日本代表で、五輪2大会に出場した池田信太郎さん

(2021年4月29日、ニッカンスポーツ・コム掲載)