<五輪を楽しむためのキーワード(1)>

1回目は卓球編。多くの人が1度はラケットを握ったことがあるだろう、なじみ深い競技だが、試合解説で飛び交う用語は専門的で難しい。日本卓球協会の宮崎義仁強化本部長(62)に用語を解説してもらった。【取材・構成=三須一紀】

伊藤美誠(2019年11月10日撮影)
伊藤美誠(2019年11月10日撮影)

用語解説
▼ツッツキ 球に下回転をかけるレシーブ。卓球台の中で行う台上技術の1つ
▼カウンター 相手強打の威力を利用して反撃する
▼ロングサーブ 相手コートで1バウンドした後、卓球台から大きく球が出る長いサーブ。ツッツキ、チキータなどの台上技術を封じられる。強いサーブなのでエースを狙える。一方、台から大きく球が出るので相手に強打で返されるリスクがある
▼フォア(フォアハンド、フォア側) 右利き選手なら自身の右側。肘を伸ばして相手側に手のひらを見せて球を打つこと
▼バック(バックハンド、バック側) 右利き選手なら自身の左側に肘を曲げて相手側に手の甲を見せて球を打つこと
▼ミドル 体正面付近のコース。フォア、バックどちらで返球するか迷うため返球が難しい
▼回り込みフォアハンド 相手からバック側に打ち込まれている球に対して、バックハンドではなくバックステップで下がりながらフォアで打ち返す技術
▼チキータ バックハンドで順横回転(右利きなら時計回り)をかけて返球する。チキータバナナのように曲がる軌道が由来。コルベル(チェコ)が名付け親
▼ストップ 相手コートで2回以上バウンドする短い返球で下回転もかかっている守備的技術。相手は強打しにくい

技術編

サーブ
▼逆横回転 右利きでは反時計回りの回転
▼順横回転 右利きでは時計回りの回転
▼下回転 バックスピン。ラケットに当たると下に落ちる
▼YG 右利きでは逆横回転がかかる。ラケットを下向きにし、手首を支点として振るので回転量が多くなる。身長が低い選手が使うとラケットが台に当たる可能性があり身長が高い選手に多い
▼巻き込み 右利きでは逆横回転がかかる。YGと違い手首を内側に巻き込むようにして回転をかける。上、横、下回転をほとんど同じモーションで打てるため、相手に読まれにくい。体のねじりと肘支点でラケットを振るので、回転量はYGより落ちる。ラケットが横か上向きのため台に当たる恐れがなく、身長が低い女子選手に多い

レシーブ
▼逆チキータ 右利きならバックハンドでボールの右側をこすり逆横回転をかける。チキータの逆。高度な技術で伊藤が得意

ラリー
▼ブロック 相手の決めてこようとする強打を止める。ラリーを継続させ相手を揺さぶる
▼スマッシュ 無回転の強打。伊藤が得意

張本智和(2019年4月6日撮影)
張本智和(2019年4月6日撮影)

タイプ編

戦型
▼前陣速攻型 台の近くでテンポの速さとスピードで勝負する。左右に振られないようラリーになる前に勝負を決めたい戦型。小柄な選手に適している
▼ドライブ主戦型 男子選手主流の戦型。台から少し距離をおき、球に前回転をかけて強打する。台から離れる分、フットワークが大事になる

ラバー
▼表ソフト 表面に並ぶ小さな粒の影響で球とラケットの接地面が小さくなるため、相手球の回転の影響を受けにくい。半面、自身でも回転をかけにくい。ナックルボールなど打球に変化が出やすく相手を惑わせる
▼裏ソフト 表面は粒がなくフラットで球との接地面が大きく、回転をかけやすい。回転をかけた威力あるボールを打てる半面、相手球の回転の影響を受けやすい
▼粒高 表ソフトよりさらに高い粒が表面に並んでいる。効果は表ソフト同様だが、より高い効果が出る

東京五輪の卓球男女代表のタイプ
東京五輪の卓球男女代表のタイプ

■戦術多様性に富む 宮崎強化本部長

卓球のラリーは0.2秒で返ってくる。その間に相手の目線や姿勢、特徴などを判断し、次に来る球を読み、戦術を考えている。体格が良ければ勝てるスポーツでもない。体が小さければ伊藤のように卓球台に近い場所で前陣速攻型で戦う。ラバーを表裏で変えて、打つ面によって球に変化が出るようにする。体格を頭脳や戦術、用具で補える。多様性に富むのが卓球競技だ。

日本卓球協会の宮崎義仁強化本部長(2020年2月5日撮影)
日本卓球協会の宮崎義仁強化本部長(2020年2月5日撮影)

(2021年4月27日、ニッカンスポーツ・コム掲載)