神戸大学大学院人間発達環境学研究科などの研究グループはこのたび、子どもが体力向上すると苦手科目の成績が良くなるとの研究結果を明らかにした。

469名の中学生を1年生時から3年生時まで2年間追跡し、体力(全身持久力)と苦手科目・得意科目の学業成績(国語・社会・数学・理科・英語の最低評定値と最高評定値)の変化の関係を調べたもの。体力以外の学業成績に影響を与える要因でもあるBMI、社会経済要因(両親の学歴と世帯収入)、放課後の勉強時間を同時に調査し、それらの影響を統計学的に取り除いて分析した。

その結果、中学1年生から中学3年生にかけて体力が向上すると、苦手科目の学業成績が改善(主要5教科の最低評定値が向上)することが示された(図参照)。一方で、体力の変化は得意科目の学業成績(主要5教科の最高評定値)の変化には関わっていなかった。

体力の変化と苦手科目(左)得意科目の学業成績の変化の関係。縦軸は学業成績の変化、横軸は体力の変化を示している(標準化した得点)。2年間で体力の向上が大きかった子どもほど苦手科目の成績の向上が大きかったが、得意科目では統計学的には認められなかった
体力の変化と苦手科目(左)得意科目の学業成績の変化の関係。縦軸は学業成績の変化、横軸は体力の変化を示している(標準化した得点)。2年間で体力の向上が大きかった子どもほど苦手科目の成績の向上が大きかったが、得意科目では統計学的には認められなかった

このことから、運動部などの練習のように体力の向上をもたらすような習慣は苦手科目の学業成績に好影響を与え、得意科目の学業成績には特にマイナスな影響を与えないものと推測される。今後は、なぜ苦手科目に対してプラスの効果が認められたのか、その要因を明らかにしていくという。

この研究は、森田憲輝(北海道教育大学岩見沢校)、石原暢(神戸大学)、紙上敬太(筑波大学=論文投稿時、現中京大学)らの共同研究によって実施された。子どもの体力と学力の関係は過去15年間にわたり研究されてきたが、見解は一致しておらず、体力向上が学力にプラスに作用するのかどうか未だ結論に至っていない状況にある。その中で科目の違いに注目することによって、研究間の矛盾が解消されることが期待される。