<セロトニン(上)>
今までに経験したことのない新しい生活スタイルに、ストレスを感じている人も多いようです。イライラ、不安を抑え、心の平穏を保つために、増やしたい物質があります。セロトニンです。
セロトニンは脳内の神経伝達物質の1つで、ドーパミン、ノルアドレナリンを抑制し、精神を安定させる働きがあります。幸福感を高めるため「幸せホルモン」とも呼ばれています。
コロナ禍でイライラする人多い
ドーパミンは喜びや快楽をつかさどる神経伝達物質で、分泌され過ぎると興奮し過ぎてしまうこともあります。ノルアドレナリンは恐怖や驚きをつかさどり、コロナ禍では分泌量が高まっていると推測されます。これら2つの神経伝達物質をセロトニンが抑制することで、興奮や恐怖を落ち着かせ、精神を安定させるのです。
不足するとうつ、パニック障害なども
セロトニンが不足すると、ドーパミンとノルアドレナリンのコントロールが不安定になります。それらのバランスが崩れることで、攻撃性が高まり、不安やうつ、パニック障害などの症状を引き起こすといわれています。
セロトニンが減少する理由は、ストレスや睡眠不足、昼夜逆転などの不規則な生活があります。 また、女性ホルモンの分泌の減少も関係していることが分かっています。更年期以降の人だけでなく、激しい減量や食事制限で生理が止まってしまう女子アスリートも女性ホルモンの分泌が減少するので、注意が必要です。
セロトニンを増やす日常生活のコツ
そんなセロトニンは、生活習慣や食事を整えることで増やすことができます。次を参考にしながら分泌量を増やし、心を整えていきましょう。
(1)食事面では
セロトニンは、必須アミノ酸のトリプトファンから作られます。トリプトファンは体内で合成できないので、含有率の高いタンパク質を多く含む食品を摂ることが大切です。大豆製品、乳製品、マグロ、カツオなど魚介類、ナッツ、バナナなどに多く含まれています。
だからといって、タンパク質ばかり摂ると、トリプトファン以外のBCAAなどのアミノ酸も多く摂取してしまい、脳内でトリプトファン濃度が上昇しにくいという報告もあります。
脳内にトリプトファンを取り込みやすくするコツとしては、タンパク質と一緒に炭水化物を摂取すること。血糖値が上がり、インスリンが分泌されて、BCAAなどのトリプトファン以外のアミノ酸が筋肉に取り込まれやすくなるため、結果として脳内でトリプトファンの合成が促進されるというわけです。つまり、主食、主菜、副菜と栄養バランスのとれた食事をとることが大切です。
また、セロトニンの元は腸管で作られるため、腸内細菌を整えることも有効です。
(2)生活面では
日光浴、特に朝日を浴びること、ウオーキングやジョギングなど有酸素運動、踏み台昇降、スクワットなどのリズミカルな運動をすること、呼吸を整えることが有効です。瞑想やゆったりと入浴することも良いでしょう。
日中、セロトニンがしっかり分泌されると、セロトニンから作られる睡眠ホルモンのメラトニンが夜間に働き、良く眠れるようにもなります。睡眠不足はセロトニンが不足する理由でもあり、負のループに陥らないよう生活リズムを整えてみましょう。
【管理栄養士・今井久美】
参考:厚生労働省 e-ヘルスネット
- セロトニン(下):セロトニン合成には腸内細菌も関与、脳と腸は連携し合っている