<栄養素を無駄なく摂る食べ方:ハーブ編>

タイムは、地中海沿岸原産と言われるシソ科の常緑小低木です。300種以上あり、日本に古くから自生している「イブキジャコウソウ」もその仲間です。

料理などに用いられているものは一般的に「コモンタイム」で、ハーブの中でも特に殺菌力が強く、ミイラの防腐剤にも使われていました。ペストが流行したとき、タイムをいぶしたり風呂に入れたりして感染を予防したそうです。日本へは江戸時代以降に伝わったようで、和名を「タチジャコウソウ」と言います。

タイムの殺菌力はハーブの中で一番という説があるほど強く、食材の鮮度を保ちます。冷蔵庫のない時代には、保存効果を高めるためにタイムを加えて調理したそうです。乾燥しても香りが残りやすく、葉を乾燥させたものはスパイスとして使います。

葉の色がきれいで、葉先までしっかりとしてみずみずしいものが新鮮です。日当たりと風通しのよい場所を選べば、あまり手をかけなくても育つので、ベランダなどでの栽培にも向いています。

主な栄養素と無駄なく摂るコツ
注目されるのはファイトケミカル(フィトケミカル)です。タイムのファイトケミカルには、抗酸化、殺菌、抗菌、抗ウイルス、防腐、抗炎症、鎮痛、去痰、鎮咳、抗アレルギー、鎮痙、脂肪分解、消化促進、強壮、収斂、血行促進、血糖値の急上昇抑制など、さまざまな作用があります。

肉や魚の臭み取りから、煮る、焼く、蒸す、マリネ、ドレッシングと幅広く利用でき、食材や調理法を選びません。オリーブ油やワインビネガーに1週間から10日ほど漬けておくと香りが移り、ハーブオイル、ハーブビネガーになります。

風邪などでのどが痛い時、タイムのティーを飲んだり、うがいに使うと痛みが和らぎます。気管支炎やぜんそく、花粉症の症状緩和や、口臭予防、アンチエイジング、精神安定などにも効果が期待できます。ティーカップ1杯分の湯にドライなら小さじ1杯、フレッシュなら3~5枝が目安です。水から煮出すか、熱湯を注いで10~15分蒸らすと抽出できます。ただし、妊娠中や授乳中の使用には注意が必要です。

一つかみほどをガーゼなどに包み、湯船に入れると薬湯となり、皮膚から薬効成分が吸収されます。肩こり、筋肉痛、神経痛、疲労回復、美肌、ストレス解消に効果があります。15分ほど置いてから入るとよいでしょう。水虫、神経痛、リウマチなどの外用薬に使われていることもあります。

保存するなら
キッチンペーパーに包んでからポリ袋に入れ、野菜室に立てて保存します。湿気に弱いので、すぐに使わない場合はドライにするのも良い方法です。

ハーブバター、ハーブチーズにも合います。バターには葉を刻み、好みでコショウ適量とともに練り込みます。チーズは、クリームチーズに刻んでレモン汁をかけたタイムの葉、すりおろしたニンニク、タマネギのみじん切りを練り込みます。軸は気になるようなら取り除いてください。ラップに包んで棒状に伸ばしておくと使いやすいです。1~2日置くと味がなじみ、冷蔵で1週間、冷凍で1カ月ほど保存できます。

【管理栄養士・高木小雪】