<栄養素を無駄なく摂る食べ方:果物編>

サクランボは桜の実ですが、春に咲く観賞用の桜とは品種が異なります。欧州東部からアジア西部が原産と言われるバラ科の落葉樹で、紀元前300年頃には栽培が始まっていたようです。世界各地で品種改良が行われ、1000種以上あると言われています。

山形県の代表品種「佐藤錦」
山形県の代表品種「佐藤錦」

サクランボは「桜の(ん)坊」で、「坊」は「坊や」などと同じように親しみを込めて「子」を表しています。「桜桃(おうとう)」とも言い、平安時代の書物に出て来ますが、この頃のものは中国の「支那実桜(しなみざくら)」だと考えられています。現在栽培されているものは、明治初期に入ってきた「西洋実桜(せいようみざくら)」です。初め北海道に移植され、東北地方に広がりました。現在、生産量の8割弱を山形県が占めています。

山形県を代表する品種が「佐藤錦」です。果肉がやわらかく、甘味と酸味のバランスが良いのが特徴です。外皮もやわらかいので傷付きやすく、日持ちはしません。

輸入品はほとんどがアメリカ産で、その9割ほどを占めるのが「ビング」です。果皮が赤黒く、ダークチェリーとも呼ばれます。果肉は紫がかった濃い赤色です。国産のサクランボに比べて大きく、果肉がしっかりして味が濃厚です。

アメリカンチェリー
アメリカンチェリー

果皮に傷や変色がなく、全体がきれいに色付き、つやつやとしてハリがあるものを選びましょう。軸は太くて緑色のものが新鮮です。種の大きさは品種ごとにほぼ同じなので、粒が大きい方が肉厚です。熟すと黒っぽくなる品種以外は、果皮の色が濃すぎると過熟の可能性があります。

主な栄養素と無駄なく摂るコツ
サクランボは、葉酸、パントテン酸、カリウム、鉄などを比較的多く含んでいます。国産品は有機酸が多く、疲労回復、ミネラルの吸収促進などが期待できます。アメリカンチェリーの濃い色素はポリフェノールで、抗酸化作用があります。

爽やかな甘みを感じますが、冷涼感のあるソルビトールが含まれています。ソルビトールはシュガーレスガムなどにも使われているもので、消化吸収がしにくい糖です。食べ過ぎるとお腹がゆるくなることがあります。

期待される健康効果は、生活習慣病予防、貧血予防、疲労回復、便秘改善、ガン予防、風邪予防などです。

保存するなら
サクランボは追熟しません。収穫したてが一番おいしいです。購入後はできるだけ早めに食べましょう。

水と乾燥に弱いです。すぐに食べられない場合は、結露を防ぐためなるべく温度変化がないように保存します。新聞紙に包んで冷暗所または野菜室に入れましょう。佐藤錦などの場合、おいしく食べられるのは収穫してから2~3日以内です。購入したらその日のうちに食べた方が良いです。長時間冷やすとおいしさが薄れていきます。冷やす場合は食べる少し前に冷蔵庫に入れるか、冷水で洗います。

アメリカンチェリーは国産品より日持ちしますが、店頭に並ぶまでに数日かかりますので、購入したらすぐに食べた方が良いでしょう。

冷凍する場合は優しく洗ってから水けをきり、保存袋に入れて冷凍します。使う時は半解凍でそのまま食べるか、ジャムやお菓子などに利用します。

シロップ漬けやコンポートにしてもおいしく食べられます。

【管理栄養士・高木小雪】