<栄養素を無駄なく摂る食べ方:果物編>

ビワは、中国原産と言われるバラ科の常緑樹です。インドの仏教経典に「大薬王樹(だいやくおうじゅ)」とあり、すべての病が救えるといった内容が書かれています。古くから薬効が知られていました。日本では奈良時代に光明皇后が創設した施薬院で、枇杷葉(びわよう)を用いたという記述がみられます。江戸時代には夏になると他の生薬も加えた「枇杷葉湯(びわようとう)」が振り売りされたそうです。枇杷葉湯は暑気あたりや食中毒予防によいとされ、庶民に親しまれていました。

果樹としての栽培は江戸中期に千葉県で、江戸後期に長崎で始まり、今でも二大産地となっています。品種は長崎の「茂木」、千葉の「田中」が有名です。茂木は果重が40~50gほどで 酸味が少なく、田中は果重が60~80gほどで完熟直前までは酸が多いですが、完熟すると甘味と酸味のバランスが良くなります。

ヘタがしっかりとして、果皮にハリがあり産毛に覆われ、色鮮やかで(完熟しても色が濃くならない白ビワもあります)左右対称のふっくらとした形のものが良品です。収穫から日が経ったものは、産毛が落ち、正面がつやつやしています。表面に傷や茶色くなった部分がないものを選びましょう。

ビワの種子や未熟な果実にはアミグダリンという青酸配糖体が含まれています。この成分は分解されると青酸(シアン化水素)となり有害です。青梅と同様、焼酎に漬けるなど加工することで摂取できるようになりますが、自家製でそのまま粉末にしたものは摂らないようにしましょう。

主な栄養素と無駄なく摂るコツ
ビワの果実には、βカロテンとポリフェノールが多く含まれています。皮をむいて空気に触れるとすぐに褐変しますが、これはポリフェノールの酸化によるものです。褐変すると抗酸化作用は失われていきます。レモン汁をかけたり、80℃以上で加熱すると褐変が抑えられますが、ポリフェノールは水溶性ですので、水につけておくと流れ出てしまいます。

ビワの葉はお茶として飲まれるほか、民間療法で腰痛や腹痛時に患部に当てると、痛みがやわらぐと言われています。

葉は生薬としても使われます。抗炎症、抗菌、鎮咳、去痰、利尿、健胃作用があり、風邪や暑気あたり、身体のほてり、むくみなどに用いられます。

期待される健康効果は、ガン予防、風邪予防、生活習慣病予防、アンチエイジングなどです。

保存するなら
ビワは日持ちしません。追熟もしませんので、購入後はできるだけ早めに食べましょう。常温で、直射日光の当たらない風通しの良いところに置いておくと良いです。常温の方が風味を感じられます。冷やして食べたい場合は、食べる少し前に冷蔵庫に入れます。

傷付きやすいので優しく洗い、軸を持ってヘソ(おしり)の方から手で皮をむきながら、すぐに食べるのがおすすめです。ほんの少し置くだけでも褐変します。

冷凍する場合は優しく洗ってから、皮をむかずに保存袋に入れて冷凍します。使うときに凍ったまま流水で軽く流すと、皮がつるんとむけます。シャーベット状でそのまま食べるか、ジャムなどに加工すると良いでしょう。

コンポートやゼリーにしてもおいしく食べられます。

【管理栄養士・高木小雪】

<参考コラム>
梅を生で食べない理由、梅酒作りになぜ氷砂糖/キッチンは実験室(39)