<栄養素を無駄なく摂る食べ方:果物編>

夏ミカンは文旦(ぶんたん)の自然雑種で、江戸時代に山口県で生まれました。秋に実が色づきますが酸味が強すぎて食べられず、当初は果汁を酢の代わりに使ったほか、観賞用として用いられていたそうです。その後、初夏まで木につけたまま置いてから収穫すると酸味がやわらぎ、食べられることがわかりました。夏に食べられるミカンなので「夏ミカン」です。5月頃に花を付けるので、実と花を一緒に見ることができます。

糖度もありますが、酸味が強いので生食よりもジャムやゼリー、菓子などに加工されることが多いです。生食用としては、夏ミカンの枝変わりである甘夏が多く出回っています。

皮にハリがあり、色むらなく濃い黄色で、ヘタが緑色のものが良品です。持って軽く感じるものは、水分が抜けて実がパサパサになっていることがあります。ずっしりと重いものを選びましょう。

主な栄養素と無駄なく摂るコツ
夏ミカンはパントテン酸、ビタミンC、カリウム、食物繊維、そして酸味のもとであるクエン酸などを多く含んでいます。

持久運動後にクエン酸を摂取すると、肝臓や筋肉において消費したグリコーゲンの補給を助けるとの報告があります。また、運動後に糖と酸を一緒に摂ることにより、疲労感が低下し、リラックス感が高まるとの主観的評価が報告されています。その他、腸内環境を整える働きもありますので、運動後すぐに夏ミカンのはちみつ漬け(酸+糖)などを摂ると良いと考えられます。果肉がしっかりしているので、調理しやすい点も魅力です。房をほぐしてサラダのトッピングにしても良いでしょう。

夏ミカンは生薬としても使われています。未熟果を輪切りにして乾燥したものを「枳実(きじつ)」、果皮を乾燥させたものを「夏皮(なつかわ)」と言い、健胃薬に使われています。また、夏皮は浴湯料としても使われます。血行促進、疲労回復などの効果があり、湯冷めしないとされています。

期待される健康効果は、疲労回復、風邪予防、整腸作用などです。

保存するなら
ヘタを下にして冷暗所で保存します。冷蔵する場合は、低温障害を防ぐために野菜室に入れてください。乾燥すると苦味が出やすくなります。乾燥しないように1つずつ新聞紙に包み、ポリ袋に入れます。1~2週間を目安に食べましょう。

冷凍する場合は房から果肉を出し、砂糖をまぶして保存用袋に入れて冷凍します。利用するときは半解凍でそのまま食べたり、凍ったままジュースにしたりしても良いでしょう。1カ月ほどで使いましょう。

はちみつ漬けにするのもおすすめです。果肉とはちみつを瓶などに入れ、3日ほどで漬かります。冷蔵庫で保管し、1カ月を目安に使いましょう。

ジャムやピールにすると長期保存ができます。皮や袋に苦みがあるので、内側の白い部分を取り除く、下ゆでするなどアク抜きして好みの加減に仕上げてください。皮は干して乾燥させ、入浴剤として使うこともできます。

【管理栄養士・高木小雪】