前回コラムに続き、4月から適用される「日本人の食事摂取基準(2020年度版)」で示された具体的な留意点について説明します。今回の改訂では、若いうちから生活習慣病の予防を推進するため、新たな目標が設定されました。

1、食物繊維

食物繊維には、便秘改善の効果があります。今回は、幼少期の食習慣が長年の習慣的な栄養素摂取量に影響し、生活習慣病(特に心筋梗塞など循環器疾患)の発症につながることから、3歳から目標量が定められました。

2、食塩相当量

世界保健機関(WHO)が提案する成人の値、1日あたり5g未満を基に、小児はエネルギーに対して調整された値を本来は目標にしたいところです。しかし、実際の摂取量が多く、WHOの目標量とかけ離れているため、現在は日本人の摂取量との中央値を目標量にしています。

発汗の多いアスリートは、水分摂取だけでなく、同時にナトリウム(塩分)やカリウムの摂取も推奨されますが、それは発汗で体外に排出された分を補うため、水分と一緒に摂ることで水分の吸収が良くなるためです。日常の食事で食塩を多く摂った方が良いという意味ではありません。味の好みは幼少期に作られますので、子どもの頃から薄味を心がけることが重要です。

3、カルシウム

男子では12~14歳、女子では10~14歳の骨への蓄積量が多くなっています。しかし、この年代のカルシウムの摂取量は、男子で約9割、女子で4割弱が必要量を満たしていないという報告があります。骨量が最大になるのは20歳前後と言われていますので、成長期のカルシウム摂取が重要です。

4、鉄

鉄は中学生の男子5割強、女子は約6割が必要量を満たしていないと報告されています。中学生の貧血有病者は1%程ですが、女子については約6%と高く、成長期、女子の鉄の摂取が勧められます。

5、ヨウ素

日本人は海藻を食べるため、不足のリスクは少ないとされている栄養素。地域によっては過剰の報告があるほどですが、小児16.6%で軽度〜中等度のヨウ素不足が認められる研究報告もあります。海藻類をあまり食べない子は、ヨウ素だけでなくカリウムや食物繊維の不足のリスク軽減のため、適度な海藻の摂取が望まれます。

「食事摂取基準」と言われても、日常生活において、私たちがどの栄養素をどのくらい摂取しているかは、分からないのが現状です。ただし、高校生は学校給食がなくなるため、食生活がこの基準からかけ離れてしまうとも言われています。日本人の健康を守るため、このような基準値があるということを頭に入れ、日々の食事で気を付けていきましょう。

【管理栄養士・今井久美】