米ニューヨークで、飼育法が「動物虐待」だとの理由からレストランなどでフォアグラを提供することを禁止する条例がこのほど可決しました。世界3大珍味の1つであるフォアグラ禁止条例は2022年に施行。全米でも1、2を争うグルメ都市に衝撃が走っています。

生産過程が残忍だと批判

フランス料理に欠かせないフォアグラは、肝臓を大きくするために、カモやガチョウの喉にチューブを入れて餌を流し込む「強制給餌」で無理やり太らせる生産過程が残忍だとして、批判の的となっていました。過去にはシカゴやカリフォルニア州でも提供が禁止されたことがありますが、いずれも裁判で「違憲」が認められ、数年後には撤回。今回も、ニューヨークを拠点とする全米最大のフォアグラ生産業者ハドソン・バレー・フォアグラは、早くも条例可決を不服とする法的処置に踏み切る方針を示しています。

美食家が集まるニューヨークだけに、今回の禁止条例の影響を受けるレストランは1000軒以上になると伝えられており、ニューヨーク・タイムズ紙は「ニューヨークでフォアグラが出せないなんてありえない。次に禁止されるのは子牛の肉か? キノコか?」と憤慨するフランス料理店のシェフのコメントを紹介。違反した場合は500~2000ドル(約5万5000円~22万円)の罰金が科せられるといいます。

カリフォルニア州では提供再開

15年に提供が再開されたカリフォルニア州では、2年後にサンフランシスコの控訴裁判所が地裁の判決を覆し、今年1月には州最高裁も同様の判断を示しましたが、「フォアグラは珍味か動物虐待か」の論争は今も続いており、ニューヨークでの禁止条例が全米に広がるのではないかと、生産業者は恐々としているようです。

しかしながら、アメリカではフォアグラ以外にも、全米もしくは州によって提供が禁止されている食材・食品が多くあります。これらを紹介しましょう。

提供が禁止されている食品の数々

全米=野生のチョウザメのキャビアは、乱獲による資源枯渇を理由に2005年から販売、提供が禁止。
全米=馬肉を食べることは合法ですが、食肉目的で馬を殺すこと並びに馬肉の輸入は禁止。
全米=羊の内臓をミンチにして胃袋詰めにしたスコットランドの伝統料理ハギスは、羊の肺が含まれていることから米国農務省(USDA)が1971年に販売禁止。
ミシシッピー州以外の全米各州=レッドフィッシュ(キンメダイ科)の販売、捕獲が禁止。80年代に、あるレストランのシェフが考案した「黒焦げレッドフィッシュ」のレシピが全米で大ヒットし、乱獲による絶滅の危機に直面したことから。
アラスカ、フロリダ、ジョージア、ニュージャージー、ワシントンDCなど全米21州=低温殺菌されていない牛乳の販売が禁止。
カリフォルニア、イリノイ、オレゴン州など全米8州=中国では高級食材として知られるフカヒレは、ヒレを取った後にサメを海に戻すため、泳げないサメが溺れ死になることが残忍だとの理由から販売、提供を禁止。
カリフォルニア、マサチューセッツ、ニューヨーク州=学校の給食でハンバーガーなどのジャンクフードの提供を禁止。
マサチューセッツ州=平飼いや放牧以外の卵や豚、子牛など食肉の販売を禁止(2017年施行)。
ウィスコンシン州=学校や刑務所など公共の施設でマーガリンの提供を禁止。

【ロサンゼルス=千歳香奈子通信員】