<海藻よもやま話(10)>

前回のコラムで「人間が生きていく上で必要不可欠な栄養素であるミネラルは、適量をバランスよく摂取することが大切」とお伝えしましたが、しばしば海藻に含まれるミネラルの過剰摂取が問題視されます。主に「ヒ素」「ヨウ素」で、特にヒ素は深刻な問題に発展しかねません。

炒り煮や混ぜご飯、あえ物、サラダなど、和食を中心に多くの料理で親しまれているヒジキ。日本人の食卓に欠かせない海藻ですが、ヒ素の含有量が高いことも分かっています。

そんなヒジキは食材として安全なのか、危険なのか? 最終回の今回は、ヒジキから学ぶ「リスクコミュニケーション」のお話です。

ヒジキの炒り煮

無機ヒ素に発がん性リスク

ヒ素(英:arsenic、元素記号:As)は、原子番号33の元素。単体としてのヒ素、炭素を含む化合物の有機ヒ素、炭素を含まない化合物の無機ヒ素など、様々な形で自然界に広く存在しています。人間の体内にもわずかながら含まれています。

しかしながら、ヒ素やヒ素化合物のほとんどは人体に悪影響を及ぼすとされ、特に無機ヒ素は、発がん性リスクがあるとの報告もあります。

農林水産省の調査によると、日本人は、食品を通じて摂取するヒ素のほとんどを、魚介類・海藻類・米から摂取しているそうです。コンブやワカメなどの海藻類と魚介類については、含まれるヒ素のほとんどが毒性の弱い有機ヒ素であり、比較的健康リスクは小さいと考えられています(※1)。一方で、ヒジキや米に含まれるのは、毒性の強い無機ヒ素の割合が他食品に比べて高いと言われているのです。

それでは、ヒジキや米は「危険」な食材なのでしょうか。

国の食品安全委員会は、「日本において、食品を通じて摂取したヒ素による明らかな健康影響は認められておらず、ヒ素について食品からの摂取の現状に問題があるとは考えていない」という見解を示しています。

農林水産省は、ヒジキ1kgあたりに含まれる無機ヒ素の量を以下の通りに示しています(※2)。

乾燥ヒジキ:67mg/kg(平均値)
水戻しヒジキ:3.6mg/kg(平均値)

乾燥ヒジキ

水で戻し、ゆでこぼしで含有量減少

乾物での数値は高いものの、実際に食べる際は水戻しをするため、無機ヒ素は水に溶けてしまい、18分の1程度まで減少します。また農林水産省は、「ゆでこぼし」によって無機ヒ素は9割程度減らすことができるとも発表しています。その際、ヒジキに含まれる鉄・カルシウム・食物繊維などといった必要な栄養素は7割以上残るというので、より安心にヒジキを食べたい方におすすめの調理方法です。

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