ヨウ素はミネラルの1つ。体内では主に甲状腺に存在し、甲状腺ホルモンを構成しています。甲状腺ホルモンはタンパク質の合成、細胞の活動、神経細胞の発達、末梢組織の成長を促し、骨格の発達と成長に必要です。また、タンパク質、炭水化物、脂質の代謝に関与し、エネルギー代謝を亢進するホルモンです。

 ヨウ素が欠乏すると、甲状腺ホルモンの生成ができなくなり、その結果、甲状腺ホルモンの分泌を促す甲状腺刺激ホルモンの分泌が増えます。この状態が続くと、甲状腺の肥大、甲状腺腫を引き起こします。甲状腺の機能低下により、発達障害、低身長、学力障害などが起こるため、成長期には不可欠です。

不足は発達に影響、成長期に不可欠

 ヨウ素は海藻類、特に昆布に高濃度で含まれるため、日本人は、非常に多くの高ヨウ素量を摂取しています。日常の食事で不足になることはなく、むしろ過剰症が心配です。

 成人のヨウ素の上限量は一律3.0mg/日です。小児にも上限量が設定されており、小児(6~11歳)は男女とも0.5mg/日、12~14歳は1.2mg/日、15~17歳は2.0mg/日になっています。

 過剰症は欠乏状態と同様、甲状腺機能低下症、甲状腺腫が起こります。このほか、体重減少、頻脈、筋力低下がみられます。

 減量目的などで、海藻類やところてんを毎日多量に食べている人は注意が必要です。一部のダイエット食品には、昆布粉末やヨウ素が添加されているものもあるため、継続して摂取している人は気を付けましょう。

 昆布チップ1袋を約1カ間食べ続けた、乾燥昆布15~30gを7~10日間摂取したという事例で、甲状腺刺激ホルモンが上昇したという報告もあります。

 また、ヨウ素は海外では不足しやすいミネラルのため、海外製のサプリメントには添加されているものもあります。使用する場合は、必ず食品表示を確認し、過剰にならないようにしましょう。

参照:日本人の食事摂取基準2015年度版

【管理栄養士・今井久美】