水溶性ビタミンであるビオチンは、糖代謝、アミノ酸代謝(BCAAの1つのロイシン)、脂質代謝に関与する酵素の補酵素(酵素を助ける)で、エネルギーの産生に関わっています。

 乳酸の分解にも関与しているため、不足すると乳酸が蓄積し、疲労感や筋肉痛が回復しにくくなります。重症化すると、乳酸アシドーシス(乳酸により血液が酸性に傾く)になる場合があります。

 腸内細菌によっても産生されますが、それだけでは不十分。卵、魚類では真カレイ、イワシ、カジキ、肉類ではレバー、大豆製品、キノコ、ナッツ類などビオチンを多く含む食材をとりましょう。食事摂取基準では、成人は1日に50μg(日本人の摂取量は45~60μg)を目安に摂取することを推奨していますが、運動により乳酸が作られやすいアスリートは、もう少し多く摂取した方が良さそうです。

 欠乏すると、乾いたうろこ状の皮膚炎、萎縮性舌炎、食欲不振、むかつき、吐き気、憂鬱感、顔面蒼白、前胸部の痛みなどが起こります。欠乏症としては、リウマチ、シェーグレン症候群(皮膚や眼が乾燥する)、クローン病(消化管に炎症を生じる)などの免疫不全症、糖尿病などがあります。

 通常の食生活をしていれば、欠乏症は発生しません。しかし、卵白に多く含まれる糖タンパク質であるアビジンはビオチンと強く結合するために、ビオチンの吸収障害が起こり、長期間、生卵を多量に摂取した場合、ビオチン欠乏症がみられることがあります。加熱して卵白が白く不透明になれば、アビジンはビオチンと結合できなくなるので、卵は加熱したものを食べるか、生卵を食べるなら1日に1、2個にしておいたほうが良いでしょう。

 また、ビオチンは熱、光、酸には安定。過剰摂取による健康障害の報告はありません。

【管理栄養士・今井久美】

参照:日本人の食事摂取基準2015年度版