ナイアシンは糖質や脂質をエネルギーに変える時に必要なビタミンで、タンパク質の代謝にも関わっています。また、脂肪酸やステロイドホルモンの合成、ビタミンCやビタミンEの抗酸化作用にも関与しています。不足すると、ペラグラという皮膚炎、下痢、頭痛などの神経症状を起こします。

 ナイアシンの働きを持つ化合物は、ニコチン酸、ニコチン酸アミドがあります。また、アミノ酸であるトリプトファンから体内で合成できます。

 ニコチン酸アミドは動物性食品に多く、レバーや肉類、カツオ、マグロ、マカジキといった赤身の魚、タラコや明太子などに含まれています。ニコチン酸は植物性食品に多く、ピーナツ、ゴマ、キノコ類、インスタントコーヒーなどに含まれています。

 これらの摂取量が少なくても、トリプトファン(乳製品、大豆製品、肉類に多い)を摂っていれば体内で合成されます。ナイアシンは熱にも光にも安定しており、タンパク質を十分摂っていれば、不足の心配はありません。しかし、アルコールの分解にナイアシンが必要なため、食事を摂らずにアルコールを多飲するアルコール依存症の人で、ペラグラが発症したという報告があります。

 ニコチン酸はタバコに含まれるニコチンに似た構造をしていますが、タバコを吸って吸収するニコチンから体内でニコチン酸ができるわけではありませんので、注意してください。ニコチンは有害ですが、ニコチン酸は必要なものです。

【管理栄養士・今井久美】

参照:日本人の食事摂取基準2015年度版