ビタミンB12は、貧血の予防・改善には欠かせない「造血のビタミン」と呼ばれる水溶性のビタミンです。コバルトを含む化合物の赤いビタミンで、アデノシルコバラミン、メチルコバラミン、スルフィトコバラミン、ヒドロキシコバラミン、シアノコバラミンがあります。

ヘモグロビンの合成に関与

 赤血球は体内で常に作りかえられていますが、赤血球中にある酸素を運ぶヘモグロビンの合成に関わっているのがビタミンB12です。ヘモグロビン合成が低下すると、悪性貧血になります。アスリートは貧血になるとパフォーマンスが低下するため、回避するには鉄だけでなく、ビタミンB12の摂取も必要です。

 通常は肝臓に蓄積されており、腸内細菌によっても作られるため、短期間で不足することはありません。しかし、動物性食品の肉類、魚介類、乳製品などに多く含まれているため、ベジタリアンの人は不足する可能性があります。また、吸収するには、胃から分泌される内因子が必要なため、胃の機能の低下した人(胃炎、切除した人や高齢者)は吸収率が低下し、欠乏症の貧血になる恐れがあります。

 末梢神経の傷の修復にも必要な栄養素なので、神経障害による痛みやしびれに対し、ビタミンB12が処方されることもあります。

 熱には強いものの、光や空気によって酸化されてしまうため、食材の切り口はラップで包むか、密封容器に保存するのが良いでしょう。過剰症は報告されていません。【管理栄養士・今井久美】

参照:日本人の食事摂取基準2015年度版