「塩あんびん」をご存じでしょうか。見た目は大福そのもので、中には小豆あんが入っています。しかし、味は全く別物です。
大量の塩を使ってあずきを炊き、砂糖は不使用。食べると、かなり塩気を感じます。しかし、小豆やもち米の持つ本来の甘味と相まって、ほのかに甘さを感じるのも事実です。
埼玉北東部の郷土お菓子
塩あんびんは、久喜市、加須市など埼玉県北東部の農村地域に伝わる郷土お菓子。発祥は江戸時代ともいわれ、砂糖が貴重だったため塩を使い、主に農家で作られていたようです。
久喜市にある老舗和菓子店「愛宕茶屋」は50年以上、創業当時の味を守り、塩あんびんを販売しています。直径7センチ以上とサイズが大きいのも特徴です(1個220円税別)。
暑さが厳しい最近は、塩分を取れることから「熱中症予防になる」とメディアに取り上げられるようになり、遠方からの問い合わせも増えたといいます。また、食欲がなくなる夏場は、甘い大福より後味さっぱりの塩味の方が食べられます。昔から「土用餅」といって、土用丑(うし)の日にあんころ餅が食べられてきたように、おもちは元気の源。補食・間食にぴったりです。
店を切り盛りする新井正子さんは「この夏も、あんびんが人気。昔の人の知恵が見直され、注目されているので、作る張り合いが出ますね」と笑顔で話してくれました。
食べ方はお好みで構わないとのこと。そのまま食べてもおいしいですが、砂糖やしょうゆをつけたり、焼いたり。ただ、作った翌日になるともち米が硬くなるので、おいしさを追求するなら、その日のうちに食べるのがいいでしょう。
◆愛宕茶屋 住所:久喜市中央1-15-23 電話:0480-22-4876 営業時間:午前9時~午後5時30分、月曜定休