私は4人の子どもたちを育ててきました。3人の息子たちは野球、娘はフィギュアスケートの選手です。子どもたちがそれぞれの競技を頑張る中で、私の出来ることを考えた時、「やはり食だ!」と思い、料理に力を注ぐようになりました。

ところが次男が中学生になって2~3カ月が過ぎた頃、腰を傷めるケガをしてしまいました。日常生活もままならない状態で、野球も3カ月間全く出来ない状況でした。

なぜ、腰を傷めてしまったのか。それは、体を大きくするために、ご飯をやみくもに食べさせていたからです。これは当時所属していたチームの取り組みでもあったので、毎日とにかく白米をたくさん食べさせていました。

「たくさん食べなきゃ」「たくさん食べさせなきゃ」と息子も私も頑張っていたおかげで、順調に体重は増加。しかし、急激に体重が増えたせいで腰に負担がかかり、トレーニングで走っている時に腰から砕け落ちるように倒れ、そのまま動けない状態になってしまいました。

魚をメインにした定食。定食にするとバランスが取りやすい
魚をメインにした定食。定食にするとバランスが取りやすい

たくさん食べれば大きくなる! と、どんどん食べさせていましたが、体を大きくするということはただ体重を増やすだけではダメで、競技に必要な筋肉とパワーをつけ、動ける体を作ることが重要だったのです。それにこの時初めて気づき、アスリートの母として失格だとかなり落ち込みました。子どもたちが傷つくのは、母として絶対に避けたいところです。きちんとした知識を身につける必要性を感じ、スポーツ栄養を学び始めました。

異なる競技の子どもたち、調理法や味付けを工夫

子どもたちが安全にスポーツを楽しみ、競技に合った体作りをするため、またその競技でのパフォーマンスを発揮するためにも、食事は重要な役割を持ちます。

牛肉といろいろな野菜を煮込んだビーフシチューは、よく作った1品
牛肉といろいろな野菜を煮込んだビーフシチューは、よく作った1品

我が家は息子たちが野球選手としてパワー、瞬発力を発揮できる大きな体を作る必要がある一方で、末娘は審美系競技のフィギュアスケートをしていました。息子たちと違い、しなやかな筋肉と見た目のスレンダーさが必要です。

温野菜のサラダはこのままドレッシングで食べるほか、チーズをかけて焼きサラダにも
温野菜のサラダはこのままドレッシングで食べるほか、チーズをかけて焼きサラダにも

体の作り方が全く違うため、食事も同じものではダメ。しかし、必要とする栄養素は同じなため、同じ食材を使いながら、調理法や味付けを変えることで対応していました。吸収できる栄養素は同じでも、調理法や味付けによって体の作られ方は変わってきます。本当に知識は重要で、必要だと感じます。その頃の具体的な工夫は「がっつり系も審美系も満足できる『和風鶏つくね』の作り分けメニュー」でも紹介しています。

鶏つくねは、体を大きくしたい息子たちにはご飯が進む濃いめの味の照り焼きに
鶏つくねは、体を大きくしたい息子たちにはご飯が進む濃いめの味の照り焼きに

娘用には脂質を控え、野菜スープにつくねを入れました
娘用には脂質を控え、野菜スープにつくねを入れました

また、親だけが頑張るのではなく、知識を子どもたちと共有することで一緒に同じ方向を向き、ともに取り組み、効果を感じて、喜び合うことができます。これは、大きな親子の絆となります。息子たちが競技を離れ、娘も大学生となった今思うことは、一緒に頑張れる期間には限りがあるということ。今子育てまっただ中の皆さんは、この貴重な期間をしっかりと感じ、楽しみながらサポートしてほしいと願っています。

【アスレシピ特派員=兵庫県在住・妻鹿直美】