具材との相性/おいしく作るポイント

ではここから、よりおいしくスパイスカレーを作るポイントを紹介していきます。

ルウを使うカレーは、具材を変えてもルウは同じ、つまりルウありきで具材をアレンジすることが多いと思います。対してスパイスカレーは、具材によってスパイスを使い分けるものだと言われています。

私たちがみそ汁を作る際、赤みそや白みそを使い分けるように、スパイスも変えるといいようです。もちろん、お好みのものを使えばいいのですが、一般的に言われる相性の良いスパイスと具材を紹介します。

クミン、コリアンダー、ターメリック、カイエンペッパー、パプリカ=何でもOK
ペッパー=お肉系
カルダモン、クローブ、シナモン=お肉系(特に鶏肉、ラム肉)
マスターシード=鶏肉、ラム肉、魚介類、甲殻類
フェンネルシード=魚介類、甲殻類

タマネギを強火で炒める理由 /おいしく作るポイント

スパイスカレーに欠かせないのはタマネギ。市販のルウの茶褐色はスパイスだけでなく、あめ色タマネギの色でもあるように、カレーにおいて重要なポジションを確立しています。

生のタマネギには辛味や酸味、苦味が入っていますが、炒めることで辛さがとろけるような甘さに変化し、メイラード反応による香ばしい香りを醸し出すようになります。そのためには強火で炒めることが大切で、水分も濃縮されてとろみが生まれるようになります。

なお、タマネギを強火で炒めた後、弱火でコトコト煮込んでいきます。実はスパイスの香りは加熱によってどんどん消えてしまうので、弱火で煮込み、具材を柔らかくするのです。

トマト缶には2種類ある/おいしく作るポイント

また、トマトも欠かせません。生のトマトを加熱して潰しても良いのですが、私はトマト缶を利用することをおすすめします。

トマト缶をしっかり炒めることで、トマトの酸味が消えて甘味が出ます。トマトにはうま味成分のグルタミン酸が入っており、炒めて脱水して濃縮させることでカレー全体の味をまとめてくれるのです。

トマト缶には「カット」と「ホール」がありますが、私は「ホール」が好みです。「カット」に使われているトマトは、よく私たちが生でも食べている丸い形のトマトが原料。角切りされているのでトマトを潰す手間がなく、種もある程度取り除かれ、果肉たっぷりですが、カレーに使う場合、少し酸味が出てフレッシュな味わいとなります。むしろ、そのフレッシュな味わいを生かしてミネストローネなどに使うと良いでしょう。

一方の「ホール」は、細長い品種(サンマルツアーノ)が原料です。味が濃く、果肉が肉厚なのが特徴で、加熱することでうま味が引き出され、甘みが強くなります。トマト缶以外にも煮詰めて形を潰した「トマトピューレ」や、さらに脱水して味を凝縮させた「トマトペースト」を使ってもOKです。

作ってみよう!スパイス4つで本格スパイスカレー!

<材料(4人前)>
・クミンシード…大さじ1
・コリアンダーパウダー…大さじ1
・ターメリックパウダー…小さじ1
・カイエンペッパーパウダー…小さじ1/2
・ショウガ…2かけ
・ニンニク…1かけ
・オリーブ油… 大さじ1
・塩…小さじ1
・トマト缶(ホール)…1缶
・タマネギ(中)…1玉
・ひよこ豆…1缶(200g)
・シメジ…1パック

<作り方>

(1)鍋に油を入れて火をかけ、温まってきたらクミンシードを入れて弱火で炒める
 ○ポイント…泡が出て、パチパチはじけて色が濃くなり、香りが出てきたらOK (2)スライスしたタマネギとトマト缶、塩を入れて強火でしっかりと炒める(水分を飛ばすのが大切!)
 ○ポイント…タマネギを先に入れてあめ色タマネギになるまで炒め、その後、トマトを入れる形でもOK。重要なのはトマトをしっかり加熱して火を飛ばし、酸味をなくして甘さに変えること。これがトマト煮込みになるか、カレーになるかの分かれ目になる。
(3)ニンニク、ショウガ、残りのスパイスを入れて全体を軽く混ぜる
(4)ひよこ豆、シメジ、水を入れて中火で煮る。塩、コショウで味を調える。具材にしっかりと火が通れば完成!
 ○ポイント…具材を入れる前に入れたパウダースパイスは、火力が強いと香りが飛んでしまうので、弱火〜中火でさっと煮込めば大丈夫。

スパイスの美味しさを科学する「風味化合物」

最後に、スパイスの豆知識をお届けします。

スパイスの「香り」は、科学用語で風味化合物と言われます。これは、スパイスにそれぞれ特有の風味をもたらしてくれる最小の分子のことで、私たちがスパイスを口に入れたときに気化して喉から鼻に達し、あたかも舌で味わったような感覚を抱かせてくれるものです。

わかりやすく言えば、唐辛子が辛いのは、唐辛子に含まれているカプサイシンという風味化合物が体内で刺激を与えるからで、風味化合物は共通する特徴に応じて12種類のグループに分かれると言われています。以下の参考にして食生活にスパイスを取り入れ、楽しんでみてくださいね。

フェノール類=甘味と温かさをもたらす(クローブ、フェンネル)
テンペン類
 -温かさをもたらす(ナツメグ、アナトー)
 -心地よい香りをもたらす(ジェニバー、コリアンダー)
 -土の香りをもたらす(クミン、二ゲラ)
 -刺激感をもたらす(カルダモン、セリムグレイン)
 -柑橘系の爽やかさをもたらす(レモングラス、レモンマートル)
ピラジン類=香ばしさをもたらす(パプリカ、ゴマ)
アルデヒド類=フルーティーさをもたらす(バーベリー、スマック)
酸類=甘酸っぱさをもたらす(キャロブ、アムチュール)
硫黄化合物=肉やタマネギのような深みとコクをもたらす(マスタード、ニンニク)
辛味化合物=熱の錯覚をもたらす(唐辛子、黒コショウ)