<キッチンは実験室(62):玄米の科学>

皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。今回は、健康食としてブームの「玄米」を取り上げます。ビタミンB群が豊富で白米よりも栄養価が高いと言われる玄米ですが、ボソボソして食べにくいという声も。そこで、なぜ玄米は白米に比べて食べづらく感じるのか、おいしく炊く方法などを科学的に解説していきます。

玄米と白米の違い

玄米は、お米を精白する前の状態のもの。米の籾殻を除去したのが玄米で、玄米についているぬか層を精米したのが白米です。

米の栄養素のうち脂質、ビタミン、ミネラル、食物繊維はぬか層と胚芽に含まれています。精米で削り取る割合が大きくなるにつれて栄養素が失われていくので、玄米の状態が最も栄養価が高いのです。

一方で、白米より消化が悪いことや、残留農薬の8割が脂質の多いぬか層につくといったことから、玄米にもデメリットはあると言われています。

科学的に「おいしいご飯」とは

そんな玄米をおいしく炊くにはどのようにしたら良いでしょうか。科学的(調理科学)見地からの「おいしいご飯」の定義は次のものです。

<おいしいご飯の定義>

でんぷんがよく糊化される(もちもち、粘りがある)
組織は適度に水和して柔らかい(ご飯の一粒一粒が水を吸って柔らかい)
米粒が崩れることなく弾力を保っている(米粒一粒がしゃっきりして、べちょべちょしていない)
粒の中の中心部まで水分が吸収されて均一に存在し、周りに付着していない(芯がない、周りがベタつかない)

この定義からすると、ぬか層や果皮がある玄米は白米より水分を吸収しづらいため、芯がある、硬くてパサパサする、火にかけても中身のでんぷんが糊化せず、もちもちにならないといった食感があるのでしょう。また、ぬかの臭み(酸化臭)があるため、食べにくいイメージがあるのかもしれません。

米を「研ぐ」という理由

米を炊く時、最初に水で「研ぐ」作業を行いますよね。「洗う」と言わないのは「玄米」に由来があるのです。

昔は白米ではなく玄米を主食としていたため、しっかりと手を使って米同士を擦り合わせて、水を吸いやすくする必要がありました。その名残が今もあり、白米を洗うと白くなる汁は「研ぎ汁」と言います。白くなるのは、ぬか層が落ちるためと言われています。

では、玄米を研いだときの研ぎ汁は何色になるか、ご存じですか? 正解は「ほぼ透明」。玄米はぬか層がついた状態なので、ほとんど白くならないのです。

玄米を炊くコツは?

しっかり研ぐ

ザルを使ったり、両手ですり合わせてしっかり研ぎましょう。玄米からぬかや表面の硬い皮が少しはぎ取られ、おいしい部分が残り、吸水しやすくなります。玄米の表面を擦り合わせ、傷をつけて吸水しやすくさせるため、「泡立て器で100回混ぜる」という方法もあります。

十分浸水させる

玄米は最低でも2時間、可能であれば半日~1日くらい浸水させます。ただし、暑い時期は腐りやすいので、半日以上おく場合は水を取り替えたり、夏場は冷蔵庫に入れたりすることをおすすめします。

水は白米より多め

玄米は硬く、吸水に時間がかかるので、水は白米の1.5~2倍を目安にします。炊飯器によっては「玄米モード」がついているものもあります。炊飯器の目盛りに玄米用の水加減があれば、それを参考にしてみましょう。玄米モードは浸水時間を長めに取る設定になっており、炊くのに1時間以上かかりますが、ふっくらもちもちに炊き上げることができるようです。

塩をひとつまみ

次の効果を期待して、玄米1カップに塩をひとつまみ(1g)入れて炊く方法もあります。

・塩(ナトリウム)を入れることで玄米の苦味(カリウム)を中和させる
・玄米の表面を覆っているぬか層を柔らかくし、水を吸水しやすくする
・炊いた玄米を保温する際に腐りにくくする殺菌作用の働き

3分づき、5分づき、7分づき米とは

玄米10割だと食べづらいけれど、精米率をコントロールして少しでも栄養をとれるようにしたのが、「分付き米」です。白米は「玄米=0割、白米=10割」の精米率ですが、玄米に近いものほど3分づき、5分づき、7分づきになり、一部の保育園などでも取り入られています。

胚芽が残っている3分づきは玄米の柔らかい感じ、胚芽がほぼ残っている5分づきは、玄米と白米の中間のようなもので、ぬか層が7割除去された7分づきは、胚芽は一部残っているもののお米に白さがあり、食感や味は白米とほぼ変わらないと言われています。発芽玄米は玄米の状態の1つで、玄米の胚芽の部分から少し芽が出ている状態のものです。

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