<キッチンは実験室(60):湯葉の科学>

皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。豆乳を加熱したときにできる薄い膜、「湯葉」。大豆の加工食品の1つで、精進料理では貴重なタンパク質源として用いられてきました。今回は、なぜ湯葉ができるのか、その秘密を紐解いていきます。

加熱すると表面に膜ができる理由

マグカップに入れた牛乳を温めたら表面に膜が張ってしまった経験はありませんか? 水やオレンジジュースを加熱しても膜はできないのに、一体どうしてなのでしょうか。

これは、表面の水分が蒸発するときに、液体の中に含まれる脂肪とタンパク質が濃縮されて膜状に固まり、皮膜となるためです。科学用語では「ラムスデン現象」と呼ばれています。

牛乳の表面に膜ができるメカニズム

1、牛乳・豆乳の中に含まれる脂肪のかたまり(脂肪球)が浮き上がる
2、加熱で固まったタンパク質と絡まりあう
3、液の表面から水分が蒸発することで、膜状に固まる

湯葉が栄養満点の理由

湯葉もこの原理を利用してできる料理です。豆乳を温めると、加熱によって固まったタンパク質が、豆乳の脂質や糖を巻き込んで膜を作るのです。つまり、湯葉は水分がなくなり、栄養素が凝縮したものになります。

水やオレンジジュースを加熱しても膜ができないのはタンパク質が含まれていないからなのですね。ちなみに、英語で湯葉は「tofu skin(豆腐の皮膚)」「soy milk skin(豆乳の肌)」と呼ばれています。

豆乳から湯葉はどのくらい作れるのか

一度、湯葉をすくい上げても加熱を続けると、また同じように湯葉が出来上がります。しかし、最初に作られる湯葉ほど脂質が多く、段々と糖質の割合が多くなるといったように少しずつ含まれる栄養素も変わっていくようです。

湯葉には、栄養と食感によって種類があります。膜が張り始めの柔らかい状態でくみ上げるものを「汲み上げ湯葉(つまみあげ湯葉)」と言います。脂質が多く含まれており、とろみとコク、濃厚な味わいが特徴で、最上級品として扱われます。

対して2回目以降に作られる湯葉は、加熱してできた膜をしばらく置いて引き上げたものになり、「引き上げ湯葉(たぐり湯葉)」と言われます。こちらは糖質が多く、甘みがあるのが特徴です。

湯葉を作り続けると豆乳の色が変わる?

さて、湯葉を何回も作って引き上げていくと、豆乳の色が変わっていくことに気づくかもしれません。白っぽくてミルキー色だったのが段々、半透明のような青っぽい色になってきます。これは先ほど説明した湯葉の成分と関係しているのです。

牛乳も豆乳も白いのは、タンパク質(カゼイン)や脂肪など水に溶けない粒子が混ざっているからです。これら水に溶けない粒子は、水の中に浮いた状態(コロイド状態による分散)ですべての光の波長を反射する「乱反射」を受け、白く見えるのです。光が水蒸気に当たって乱反射し、雲が白く見えるのと同じ原理ですね。

湯葉を何度も作っていると、タンパク質と脂肪が失われていくので、次第に白さがなくなってきます。ちなみに牛乳も、無脂肪は青みがかったやや透明色をしていますし、母乳は、牛乳に比べてタンパク質より糖質の割合が多いために、牛乳ほどはっきりとした白さがないのです。

湯葉を実際に作ってみよう

それでは豆乳を使って、自宅で湯葉を作ってみましょう。小鍋やホットプレートで簡単に作れます。何度も作ってみて、その味わいも感じてみてください。

<材料>
・調製豆乳 1000ml

<作り方>
1、調製豆乳を鍋に入れて、弱~中火で温める。85℃を超えると5~6分で膜が張ってくる
2、これを箸でつまめば「汲み上げ湯葉(つまみあげ湯葉)」となる

タンパク質は40℃くらいからゆっくりと固まり始めますが、高温になるとぼろぼろと分離するため、沸騰直前に火を弱めるのがポイントです。つまみ上げた湯葉は、ワサビしょうゆやポン酢につけてお召し上がりください。