<キッチンは実験室(50・上):エビの科学>

みなさん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。エビの種類は30以上あると言われますが、ブラックタイガーなどの黒いエビをゆでると赤くなったことに驚いたことはありませんか。夏に向けて旬を迎える白エビは赤いエビと何が違うのでしょうか。今回は、そんなエビの科学に注目していきます。

黒っぽいエビをゆでると赤くなるわけ

生だと、赤いものや黒っぽいものがあるエビですが、ゆでるとどちらも鮮やかな赤い色になります。実はどのエビも赤い色素(アスタキサンチン)を持っています。これはエビが食べるプランクトンや藻に含まれているもので、長い時間をかけて体内に蓄積されるものです。

一方、エビは甲殻類が生きている時に作られる青い色素(クラスタシアニン)も持っており、これが強く出る種類は赤い色素を隠し、黒っぽく見えます。しかし、この青い色素はタンパク質で、熱によって形が変わってしまうため(変性)、加熱すると色素が壊れて、隠れていた赤い色が出てくるのです。

紫外線から身を守るための赤い色素

赤い色素は、エビが浅い海で紫外線から身を守るために蓄積されると考えられており、周りの生き物から身を隠すために青い色素を作り出すという説もあります。

ここで調理のワンポイント。「加熱して赤くなったら火が通った印」と思うのは早合点。エビは身に完全に火が通る前に、赤くなってしまいます。火が通ったか見極めるには必ず、身が引き締まって色が白く、不透明になったかどうかで判断してくださいね。

「富山湾の宝石」白エビはなぜ赤くない

富山県の日本海で収穫される白エビは夏に向けて旬を迎えます。透明感のある淡いピンク色で、まさに「富山湾の宝石」。しかし、どうして赤くないのでしょうか。

実は、白エビには先ほど説明した赤い色素が少ないのです。赤い色素は長生きすればするほど、また産卵に関わるほど強くなりますが、約10年という赤エビの寿命に比べ、2~3年と寿命の短い白エビには、赤い色素がそれほど蓄積されていないのです。

以前、「お魚の科学」でも説明しましたが、本来白身魚であるサケが真っ白でもなく、真っ赤でもなくピンク色なのは、同じ赤い色素のおかげです。この赤い色素は抗酸化力のある微量栄養素の1つとして近年注目されており、エビを紫外線から守るのと同様、人間にも効果があるとしてサプリメントや化粧品にも使われています。

エビは頭付きで買うべきか、冷凍か

スーパーで売っているエビには、頭がついているのもあれば、むいてあるもの、冷凍のもありますよね。頭や殻付きの方がおいしいのか、と思いきや、そういうことではありません。エビの鮮度にも科学があります。

エビは死後、身を劣化させる消化器系の酵素が分泌され、体内に流れ出ます。つまり、すぐに柔らかく生臭くなってしまいます。この酵素はエビの頭の付け根(中腸腺)から分泌されるので、エビの劣化を遅くするには、できるだけ早く頭を取る方がいいのです。

獲れたての出荷→頭がついているエビの身。身がパサパサにならない、風味がいい。頭や殻からだしが出る。
それ以外のエビ→加工場で急速冷凍されたもの(-20度)が鮮度的には良い。

鮮度の見極め方は、頭部の硬さや黒ずみ具合をチェックすること。むきエビの鮮度は分かりづらいですが、身に張りがあり、透明感があるものほど新鮮です。パックにドリップ(液)が多く出ているものは避けた方が無難です。

冷凍シーフードの上手な解凍の仕方

冷凍エビの場合、どうやって解凍するのが良いのでしょうか。もちろん自然解凍が一番ですが、時間がない時は食塩水で戻すのがおすすめです。具体的に紹介しましょう

<冷凍エビの解凍方法>

常温の塩水で戻す(30分)
・シーフードミックス1袋(200g)に対して水200ml、塩小さじ1(6g)が目安。
・常温で戻して指で摘んで弾力があれば、水を軽く切って出来上がり。
・海水に近い塩分(3%)で戻すことで、水分が抜けることなくプリプリがキープされる。

また、加熱する際は最後に入れるのもコツです。エビやシーフードはタンパク質を多く含むため、加熱しすぎると硬くなってしまう特性があります。パスタや野菜炒めなどに入れる際は、最後に入れて火を通しすぎないように。冷凍シーフードは一度火の通っているものが多く売られているので、加熱済みか表示を見て確認しましょう。