<キッチンは実験室(33):メレンゲの科学>

皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)のみせすです。今回は年末年始シリーズということで、第31回で紹介した「茶碗蒸しと卵の科学」を発展させ、クリスマスやお正月で食べることの多いスポンジケーキを科学します。

とろける口溶けはどこから?

スポンジケーキやシフォンケーキといえば、口溶けの軽さ、「ふわふわ感」が思い浮かびます。同じ小麦粉が原料なのに、パンのように噛み応えがあるわけではないし、お焼きのように硬くもない。

その理由は、生地に空気が含まれているから。生地に加える卵が持つ泡立つ性質「起泡性」によるものです。泡がスポンジ状の組織を形成して、弾力のある食感をもたせてくれるのです。

まず、お菓子が膨らむ原理は、科学的に以下の4種類に分けられます。

(1)物理的:気泡の熱膨張
卵白を泡立てて熱を加えると、1つ1つの気泡が膨張して生地が膨らむ。
例:スポンジ生地、スフレ生地、シフォンケーキ

(2)物理的:水蒸気の発生(水分の気化)
生地に含まれる気泡(水分)が水蒸気になる時、体積が増えて膨らむ。
例:折り込みパイ、シュークリームの生地

(3)化学的:膨張剤の化学反応
ベーキングパウダー、重曹などの膨張剤が、熱や化学反応で分解する時に膨らむ。
例:ホットケーキ、炭酸まんじゅう、どら焼き

(4)生物学的:微生物によるガスの発生
微生物の酵母が発酵によって生成する「炭酸ガス」によって膨らむ。
例:パン生地、中華まんじゅう、ピザ生地

メレンゲが白いのはなぜ?

卵白は透明ですが、泡立てると白くなります。なぜだか分かりますか? それは、卵白が空気を抱え込んでいるから。空気を含んだ海の波や空の雲が白いのと同じです。

その卵白に含まれるタンパク質の2つの性質から、メレンゲができます。

(1)起泡性:卵白が空気を抱え込んで泡立つ
(2)空気変性:空気に触れて泡が安定、持続する

泡は泡でも、石けんの泡はすぐ潰れてしまいますが、メレンゲの泡が泡立てるほどもっちりするのは、卵白に含まれるタンパク質(オボアルブミン)によるものです。このタンパク質は空気に触れると構造が変わり(タンパク質の空気変性)、空気と水の境界面で次々とつながって硬い膜状となります。この膜によって気泡が安定し、つんとツノが立つ、細やかなメレンゲとなるのです。

ただし、卵白を泡立てる時、きれいなボウルを使わないと泡立ちません。サラダ油やバターの油脂はメレンゲの構造、つまり卵白内の気泡であるタンパク質の膜を破壊するからです。

次のページメレンゲに砂糖を分けて入れるのは? 古い卵の方が泡立てやすい?