<煮卵の科学:上>

 皆さん、こんにちは。キッチンの科学プロジェクト(KKP)の「みせす」こと金子浩子です。今回は、ピクニックにおすすめの作り置きレシピ「煮卵」に焦点を当ててみます。

 簡単に作れそうな煮卵ですが、ゆで卵が半熟だったり、うまくむけなかったり、失敗したことはありませんか? 科学的に考えることで、失敗せずにおいしく作ることができるのです。煮卵の科学を2回に分けてお伝えします。

そもそもゆで卵って?

 それでは、生卵を思い浮かべてください。透明な卵白の真ん中に、オレンジ色の卵黄が浮かんでいます。これらの成分は「タンパク質」。熱を加えるとタンパク質の形が変わって(変性)卵白は白く濁り、卵黄はぱさぱさな黄色になり、さらにゆでるとその周りが緑色になってきます。

 白身、黄身はそれぞれ固まる温度や時間が違います。卵白が完全に固まり始めるのが75℃以上なのに対し、卵黄はもっと低い68℃から。それをうまく利用したのが、温泉卵や半熟のゆで卵です。

 卵白は半熟で、卵黄がトロっと固まっている温泉卵は、68~70℃を30分以上保つと出来上がります。卵白をしっかり固め、卵黄が半熟のままの半熟ゆで卵は、沸騰したお湯で短時間ゆでると作れます。

急激な温度変化で殻にひび

 さて、ゆで卵を作るとき、皆さんは水から入れますか? お湯からですか? 私は小さいときに「水から」と母から教わりました。その理由を科学的に解釈してみます。家庭では通常、卵は冷蔵庫に入っていて冷えているものだから、急激な温度変化があると殻にひびが入りやすいため、水から入れた方がいい、と言われていたのでしょう。

 しかし、これでは再現性に大きな欠点があります。水からゆでた場合、沸騰するまでの時間も固まり度合いに影響が出てくるので、いつも同じように出来上がるとは限らないのです。

 固ゆでのゆで卵を作る場合は、時間が多少前後してもいいのですが、半熟卵は時間をきっちり測っておくことが成功の秘訣です。

 作り始める前に冷蔵庫から取り出し、常温に戻しておきます。お湯が沸騰したらお玉に卵を乗せて静かに熱湯に入れて、そこからタイマーをスタートさせるのです。