訪日外国人観光客の増加を受けて、飲食店などで「ヴィーガン対応」という表記を見かけることが多くなってきました。ヴィーガンの人数は世界人口の約3%、日本でも厳格なヴィーガン人口は約1.4%といわれています。

そこで、混乱されがちなのが「ヴィーガンとベジタリアンは何が違うのか」ということです。

ヴィーガンとベジタリアンの違い

ヴィーガン=肉や魚、乳製品、卵などの動物性食品を食べず、レザーなどの動物製品を消費しない人(完全菜食主義者)、ライフスタイルを指します。

ベジタリアン=ベジタリアンは様々な種類があり、肉や魚は食べないことが主軸にありますが、あとは個別の考え方により、乳製品、卵、はちみつを摂取する人を指します。

ヴィーガンは当初、動物愛護や健康の観点から始まりましたが、SDGsの目標達成や環境保護の観点から実践する人も増えているという背景があります。

「ヴィーガン対応ができれば、アレルギー対応もまかなえる」と考える人もいるようですが、食物アレルギーの観点から言うと、完全に対応できるとは言い切れません。

その理由を確認しておきましょう。

ヴィーガンと食物アレルギー

ヴィーガンは、動物性食品を食べないことを自分自身で選択する食事スタイルですが、食物アレルギーは、アレルゲンとなるものを食べることで症状が出る、中には生命にかかわるような症状が出てしまうことで、食物アレルギー対応食は、そういった人のための食事です。

ヴィーガンは動物性食品のみ除去する内容ですが、食物アレルギーの特定原材料28品目の中には、小麦、くるみ、果実などの植物性食品も含まれています。

つまり、それだけでも「ヴィーガン対応食提供≠アレルギー対応食提供」です。

さらに、アレルギーは個人差が大きく、摂取できる量が個人個人異なり、細かいヒアリングも必要です。動物性食品がアレルゲンの食物アレルギーが多いため、「ヴィーガン対応レストランはありがたい」という声もありますが、ヴィーガンとアレルギーでは、注意する観点が異なるということを忘れないようにしておきましょう。

提供する側も理解を

皆さんの中には、食物アレルギーの当事者の方もいれば、飲食店などで食事を提供する方もいるでしょう。消費者庁のサイトでは、外食や中食における食物アレルギー教育ビデオ「外食・中食での食物アレルギーについて」が無料で視聴できますので、ぜひご覧ください。アレルギーのある方、支える方、提供する方が相互理解を深められるといいですね。

さらに、訪日外国人の食物アレルギーを確認する際に意思疎通ができるか不安になる方もいることと思います。現在、英語、中国語などの多言語で書かれた食物アレルギーコミュニケーションシートが複数のサイトで紹介されていますので、これらを活用してみて下さい。

Japan's Food Labelling System(English)食物アレルギーコミュニケーションシートから抜粋
Japan's Food Labelling System(English)食物アレルギーコミュニケーションシートから抜粋

日本人が海外旅行へ行く際にも活用できることと思います。

本日紹介するレシピは、クリスマスのお菓子としても映える「アレルギー対応アップル米粉パウンドケーキ」です。時短の工夫として米粉ホットケーキミックスとオーブンを活用しています。

今が旬のリンゴには、ビタミンCやカリウムなどが含まれており、体調不良の際にも重宝する果実の1つです。高貴な香りがする紅茶の茶葉を加えることで、上品な味の広がりと共に、紅茶の成分のテアニンがリラックス効果を高めてくれます。ひとりでゆっくりしたい時に、またはちょっとしたパーティーのメニューにもお勧めです。

これまで、このコーナーではアレルギー疾患の方が少しでも生活が楽になるように、またアレルギーのない方にも相互理解を深められるような情報を発信してきました。アレルギーのあるなしに関わらず、食生活を工夫することで体質が改善する方をこれまで数多くみてきています。皆様にとりまして、少しでもお役に立ちましたら幸いです。

アスレシピには充実した情報がぎゅっと詰まっています。限られた閲覧期間ではありますが、皆様の健康増進に向けて有効活用していただきたいと思います。長年に渡り、お読みいただき、本当にありがとうございました。

管理栄養士・乳井美和子、小高鏡子