5月6日に英ロンドンで開催されるチャールズ国王の戴冠式を前に、昼食会向けメニューとして「コロネーション・キッシュ(戴冠式キッシュ)」という記念メニューが発表されました。国王とカミラ王妃が「個人的に選んだ」料理で、王室の公式サイトではそのレシピと共に、バッキンガム宮殿のシェフがキッシュを作る動画も公開しています。

環境に配慮して一般なベーコンや合いびき肉など肉類は使っておらず、具材はホウレン草とソラ豆、新鮮なタラゴン(キク科ヨモギ属の多年生植物でフランス料理によく使われるハーブ)のみ。温かくても冷めても美味しく食べられる一品で、サラダやゆでた新ジャガイモと一緒に食べても良いと説明しています。

ホウレン草とソラ豆、新鮮なタラゴン

王室が発表したレシピをもとに、作り方を簡単に紹介しましょう。

パイ生地は、ラードを使って手作りしなくても市販のパイシートで代用も可能。パイが焼けたらそこにチーズ、細かく刻んだタラゴン、ホウレン草、ソラ豆を入れます。次に卵と生クリームを混ぜた液体を流し込み、最後に少量のチーズを上からかけて、オーブンで焼けば完成です。

公開された「コロネーション・キッシュ」をもとに、イラスト化してみました。パイ生地に細かく刻んだタラゴン、ホウレン草、ソラ豆が入っています
公開された「コロネーション・キッシュ」をもとに、イラスト化してみました。パイ生地に細かく刻んだタラゴン、ホウレン草、ソラ豆が入っています

戴冠式の週末には、英国内はもとより英連邦に属する国々でも、街のあちらこちらでコミュニティーの人たちが食べ物を持ち寄って屋外に集まり、大きなテーブルを囲んで食事をしながら戴冠式を祝います。「コロネーション・キッシュ」は、この国民による「ビッグランチ」向けに考案されたメニューで、誰もが作りやすい定番メニューとなることを狙っているものですが、「突っ込みどころ満載」として物議を醸しています。

卵不足なのに卵料理?なぜソラ豆?

英国では昨年後半に鳥インフルエンザが発生して以来、卵が不足し、卵の価格が高騰しています。その中で、卵料理が採用されたことに批判が殺到。SNS上では「スーパーから卵が消えてるんだよ」「もはや毎週の食費をねん出する余裕さえないのに」「卵不足のご時世にキッシュなんて鈍感で滑稽」といったツイートや、空の商品棚の写真と共に「それで何を使ってキッシュを作るの?」と書き込む人もおり、国民の怒りを買っています。

さらに、ソラ豆とタラゴンについても「奇妙な選択」「なぜソラ豆? 新鮮なタラゴン? 理解できない」と言った声も。「ホウレン草にアスパラとグリンピース、チェダーチーズを合わせた方が、より英国らしいキッシュになったはず」と話す料理家もいます。あるメディアは、深刻な物価高騰で多くの国民が生活苦を訴える中で行う戴冠式のため、王室は比較的安価で手に入れやすい一般的な食材を使ったレシピを考案したと指摘するものの、完全に裏目に出たようです。

それ以前に、そもそもキッシュはフランスのアルザス=ロレーヌ地方の郷土料理で、古典的な英国のレシピからかけ離れていることにも賛否両論があります。伝統的なフランス料理に挑戦することに興奮する王室ファンがいる一方で、海峡の向こう側からインスピレーションを得たと眉をひそめる人や英国人とフランス人の緊密な関係の象徴だと見なす人もいます。

ちなみに、1953年に行われたエリザベス女王の戴冠式では、カレー風味のクリームソースで鶏肉を和えた「コロネーションチキン」というサラダレシピが考案されました。コロネーションチキンはその後、クリームソースがマヨネーズの味つけに変化して一般家庭に広まり、現在はサンドイッチの具材として英国民の間で親しまれています。

果たしてコロネーション・キッシュも、いつの日か英国の人々の国民食となる日が来るのでしょうか。

【ロサンゼルス=千歳香奈子通信員】