<2022年グルメ・トレンド予想(上)>

アメリカのアマゾン傘下の自然派食品スーパー大手「ホールフーズ」が、毎年恒例の「2022年グルメ・トレンド予想トップ10」を発表しました。世界中のバイヤーや料理専門家などによるトレンド予想で、コロナ禍でより健康志向が高まる中、「持続可能な開発目標(SDGs)」であることも、来年ブレークしそうな商品のキーワードになっています。

また、ニューヨークを拠点とするフード&レストランのコンサルタント会社も、「2022年に注目すべき4つのホットな食品トレンド」を発表し、ポストコロナを見据えた食のトレンドに注目しています。「2022年グルメ・トレンド予想」の前編では、ホールフーズのトップ10を紹介します。

超都市型農業

超都市型農業とは、都会のビルの屋上や屋内などの限られたスペースを活用し、最先端のテクノロジーを用いて栽培を管理する農業です。生育が天候に左右されず、効率良く新鮮な農作物を供給できるメリットがあります。ホールフーズでは2013年にニューヨーク州ブルックリンの店舗の屋上に広大なグリーンハウスを建設し、そこで栽培された野菜を店舗で販売する取り組みを実施しており、来年はそうした流れがより加速すると予想。今後は店舗の通路で育てたキノコや、ロボット農業による野菜など都市型農業がより身近な存在になりそうです。

水耕栽培のオーガニックレタス
水耕栽培のオーガニックレタス

ゆず

香り高い果実として知られるゆずは、日本では薬味として食したり、冬至にゆず湯に入る風習があったり、なじみのあるものですが、欧米ではまだ一般的でありません。しかし、近年はゆずを使ったデザートが人気になりつつあり、ゆず風味のアルコール飲料やビネガー、ドレッシングなども登場し始めていることから、レモンやライムに代わる柑橘類として大ブレークするかもしれません。

ゆず風味のビネガー
ゆず風味のビネガー

減量主義(REDUCETARIANISM)

イギリス発祥の減量主義とは、菜食主義の一種。完全菜食主義(ビーガン)になるのではなく、赤身肉や鶏肉、乳製品や卵など動物性食品の摂取量を減らすという考え方です。菜食主義に興味はあるものの、動物性タンパク質も摂取したいという人々の要望から生まれたもので、大豆製品などの植物由来のタンパク質にプラスして、グラスフェッド(牧草飼育)の肉や卵などで代用します。健康に良いだけでなく動物福祉や、食肉生産に由来する温暖化ガス排出の削減を通した環境保護にも貢献できると考えられています。

グラスフェッドのビーフジャーキー
グラスフェッドのビーフジャーキー

ハイビスカス

ハイビスカスティーは世界中で愛飲されていますが、アメリカでは独特の甘酸っぱさを生かしたヨーグルトやスプレッド(パンやクラッカーなどにぬるペースト)、ソーダなどハイビスカスの成分を含んだ様々な食品が登場しています。ビタミンCやクエン酸など健康に良い栄養素を含んでいるだけでなく、ビビッドなピンク色の見た目の美しさも相まって人気が急上昇しています。

ハイビスカスのドリンク
ハイビスカスのドリンク

低アルコール

コロナ禍の今年、食品業界で売上を伸ばしたものの1つが、度数を下げたスピリッツ。特にミレニアル世代やZ世代を中心に、巣ごもりのお供として低アルコールやノンアルコール飲料を愛飲する傾向が高まっています。今年、ホールフーズ各店で記録的な売り上げを達成したことから、来年もその傾向は続くと予想しています。

スーパーのノンアルコールコーナー
スーパーのノンアルコールコーナー

農地に優しい穀物カーンザ

甘くてナッツのような風味と長い根を持つことが特徴の「Kernza(カーンザ)」は環境に優しい穀物と言われています。多年草のため、小麦のように毎年植え替える必要がないことから、作業に関わる二酸化炭素の排出量を削減できるほか、少ない水で育つため土壌生態系の回復も期待されています。すでにアメリカではシリアルやビール、パスタなどの製品に利用されています。

カーンザのマカロニ&チーズ
カーンザのマカロニ&チーズ

ヒマワリの種

メジャーリーガーが試合中にベンチで食べているのを目にすることも多いヒマワリの種は、ビタミンEやビタミンB1、タンパク質、飽和脂肪酸などが多く含まれるため、生活習慣病の予防や免疫力向上などの効果が期待できます。そのまま食べる以外に、最近はクラッカーやアイスクリーム、クリームチーズなど、ヒマワリの種をベースにした食品が登場しています。これらの製品はナッツを使用していないため、アレルギーを持つ子どもも食べられるスナックとしても注目されています。

ヒマワリの種を使ったクラッカー
ヒマワリの種を使ったクラッカー

モリンガ

スーパーフードとして知られるインド原産の植物モリガンは「奇跡の木」とも呼ばれ、インドやアフリカではハーブ療法として用いられています。栄養価が高いだけでなく、成長が早く、干ばつにも強いことから、特定の地域では栄養失調と戦うための食料源としても使用されています。アメリカでは、抹茶の代替品として粉末をスムージーやソース、焼き菓子などに利用する人が増え、最近ではモリンガを使った冷菓やプロテインバーなど新たな製品も誕生しています。

粉末のモリンガ
粉末のモリンガ

機能的な炭酸飲料

嗜好品として単においしいだけでなく、機能性が付与された炭酸飲料が求められそうです。腸内フローラのバランスを整えるプロバイオティクス(乳酸菌やビフィズス菌など)や、プレバイオティクス(オリゴ糖や食物繊維など)、天然由来の原材料のみで作られたボタニカルといった機能がプラスされた炭酸飲料が健康的なドリンクとして注目されています。

プロバイオティクス入り炭酸飲料水
プロバイオティクス入り炭酸飲料水

ターメリック(ウコン)

カレーでおなじみの香辛料、ターメリックは、古くからアーユルヴェーダや漢方薬として使われ、アメリカでは栄養補助食品としても知られています。ホットミルクにターメリックとシナモン、はちみつを加えた「ゴールデンミルク」やターメリック入りオレンジジュースは人気のドリンクになりつつありますが、新たにシリアルやザワークラフト、アイスクリームなどの成分にも使用されるようになっており、来年も目が離せない素材となっています。

ターメリックのドレッシング
ターメリックのドレッシング

【ロサンゼルス=千歳香奈子通信員】