障害者スポーツの国際大会に出場するなど、国体出場レベルの運動能力を持ち、肢体不自由を伴うパラアスリートの4割が、自力で理想とする食事を実現できないことが明らかになった。大阪市立大学大学院生活科学研究科の出口美輪子特任助教、都市健康・スポーツ研究センターの横山久代准教授、生活科学研究科の本宮暢子特任教授ら、内科医(糖尿病専門医・日本スポーツ協会公認スポーツドクター)と管理栄養士を中心としたグループの研究によって分かった。
研究グループは2020年11月~2021年3月の期間に、大阪府を活動拠点とする障害者スポーツの国際大会に出場するパラアスリート32人(肢体不自由、平均40.5歳)を対象に、栄養知識や食行動、自分自身が無意識で持つ身体のイメージなどを聞くアンケートを実施した。その結果、4割が食材調達や調理に介助が必要で、自力で理想と考える食事を実現できないことが分かった。
また、身体に良いイメージを持つパラアスリートほど自身の食習慣を健康的と評価していたが、一般栄養、スポーツ栄養ともに誤答が多く、「体調が良い」「身体に異常がない」など主観的な感覚で食事量を適切と判断していた。パラアスリートは立位をとることができず、四肢に切断・欠損がある場合には体重や体脂肪率を測定することも難しいため、これらの客観的指標をもとに栄養の過不足を判断することが難しいという背景も見えた。
さらに、スポーツ栄養の正しい知識を持っている栄養士との接点もほとんどなく、食事や栄養に関する関心が低いことも新たな課題として見つかった。
肢体不自由選手の消費エネルギー量
現在はパラアスリートにかかわる栄養士が、肢体不自由アスリートの消費エネルギー量を推定するために参照できる指針がない。研究グループは「このことが、肢体不自由アスリートの消費エネルギー量の推定が困難な原因の1つ」として、消費エネルギー量の推定方法に関する基礎的研究を含めていく方針だ。視覚障がい、知的障がいなどその他の障がいを伴うパラアスリートにもそれぞれ食行動上の課題があるが、消費エネルギー量の推定は健常者と同様に行えるとしている。
また、競技力向上のために必要な食事に関する知識について、パラアスリートだけが得たとしても、理想的な食事を自分で準備や調理ができないことも多いことから「介助者への教育も合わせて行う必要があると」との考えを明かした。研究グループは「これらの結果を元に、パリ・パラリンピックを含め、選手自身がターゲットとする国際大会への出場や活躍の機会が高まることを期待している」と話している。