競泳女子背泳ぎのオーストラリア代表として、北京、ロンドン、リオと過去3つのオリンピック(五輪)で計5つのメダルを獲得しているエミリー・シーボーム(29)が、2年間にわたって苦しんだ摂食障害からの完全復活を目指し、東京五輪に臨む。

2018年パンパシフィック水泳のポスターに起用されたエミリー・シーボーム(右)
2018年パンパシフィック水泳のポスターに起用されたエミリー・シーボーム(右)

シーボームは今年の元日、自身のインスタグラムで摂食障害を患っていることを公表した。「過食、嘔吐に下剤を服用。カロリーを計算して食事を抜き、常に体重を計っている。服を着た自分を恥ずかしく思い、鏡の前に立つたびに体型をチェックしてきた」。

オーストラリアの国内記録を持つ現役選手が赤裸々に告白したことは、国内外で大きな話題となった。

速く泳げる唯一の方法は「体重を減らすこと」

摂食障害になったのは「速く泳ぐことができる唯一の方法は『体重を減らすことだ』と言われ、それを信じていたから」だという。16歳で初出場した北京五輪400mメドレーリレーで金メダルを獲得。以来、世界のトップを走り続けてきたが、2017年に子宮内膜症の手術を受け、翌年には同じく競泳代表選手だった恋人と破局するなどプライベートでの辛い出来事が重なり、成績不振に陥っていたことも、要因の1つに挙げられている。

「今年はもっと自分に勇敢になりたい。自分の体に相応しい愛を与え、自分を含めたすべての人に正直でいたい」と前向きな気持ちを綴っていた。「誰も知らないし、理解できないので、何事もないふりをしてきた。でも、摂食障害に苦しんでいるアスリートは自分だけではないと気付き、公表しようと思った。若い頃に、やせているから速く泳げるわけではないと教えてくれる人がいたらと思ったから」と地元メディアに明かしている。

2018年8月のパンパシフィック水泳女子100m背泳ぎで銀メダルを獲得したエミリー・シーボーム(左)
2018年8月のパンパシフィック水泳女子100m背泳ぎで銀メダルを獲得したエミリー・シーボーム(左)

東京五輪で引退することを決意し、すべてをトレーニングに捧げてきたが、コロナ禍で開催が1年延期。気持ちを切り替え、摂食障害からの回復を支援する慈善団体のサポートも受けながら完全復帰を目指してきた。右手首にはこの思いを忘れないよう、昨年末に支援団体の名前にもなっているバタフライ(蝶)のタトゥーも刻んだ。

競泳女子は24日から開始。メダルを狙って最後の闘いに挑むシーボームは背泳ぎ100mと200mに出場する。

【ロサンゼルス=千歳香奈子通信員】