陸上女子100m障害で寺田明日香(31=ジャパンクリエイト)が、いよいよ念願だった五輪に出場する。6月26日の日本選手権で11年ぶりに優勝。12秒84の五輪参加標準記録こそ突破できなかったが、世界ランキングでの追加で代表入りし、大舞台への切符を手にした。

高校総体、日本選手権ともに3連覇するなど10代で注目されたが、摂食障害など心身のバランスを崩して23歳で引退。結婚、大学進学、出産、7人制ラグビーへの転向を経て18年12月に陸上界に復帰し、今季は日本記録を2度更新する走りを見せていた。一度は諦めた夢の五輪。挫折と苦悩を乗り越えて自分の力でつかみとり、31歳でそのときを迎える。

日本選手権女子100m障害で金メダルを手にする寺田(中央)

「チームあすか」に管理栄養士2人

夫でマネジャーの佐藤峻一氏(38)、長女果緒ちゃん(6)の支えはもちろん、コーチ、トレーナー、管理栄養士など各専門家で構成するサポート軍団「チームあすか」の存在も大きい。管理栄養士は廣松千愛(ちより)さんと奥隅知里さんの2人が連携してサポート。日々の栄養支援をするだけでなく、寺田がオフの日に自宅へ行き、食事を作ってきた。

その回数が月2回に増えた今シーズン、廣松さんは寺田のリクエストを受け、一緒に食材を購入しながらメニューを決定し、家族3人分の朝、夕の食事を1度に約3日分、4~5時間かけて作り置きしている。

日本選手権前後の食事を見せてもらい、それぞれのメニューに込められた思いを聞いた。

日本選手権前(6月17日~)

<ポイント>
 試合前でもあり、体重が落ちやすいため、糖質(ごはん)がしっかり摂れるおかずを意識した。

廣松さんが作った日本選手権前の食事

・トウモロコシの炊き込みごはん=寺田選手があまり白米を好まないため、旬のトウモロコシを使って味付きごはんにした。
・スープ2種類(ズッキーニとチキンのトマトスープとビーツのスープ)=トマトは寺田選手と果緒ちゃんが好きな野菜。試合前は緊張して食事が喉を通らないこともあるので、冷凍作り置きもできるスープに。
・カボチャとナッツのサラダ=食が進むようにカレー味。カボチャから糖質補給できるように。
・豚肉とアスパラのチリソース炒め=豚肉料理は寺田選手からのリクエスト。スイートチリソースで食べやすく。
・ローストポーク=低温調理器を使ってゆっくり3時間調理。
・豆腐とサケのハンバーグ=魚料理も普段あまり好まないので、食べやすいサケを使ったメニューに。
・パプリカとキュウリのピクルス=酸味のある料理で疲労回復。
・ワカメとキャベツ、桜エビのナムル=中華味に。乳製品の摂取も少ないので桜エビでカルシウムが摂れるように。
・鶏もものネギみそソース=ネギみそソースで食が進むように。
・ホウレン草とエノキの梅あえ=これも酸味がある料理で食が進むように、はちみつ梅を使用。
・鶏なんこつの磯辺揚げ=なんこつは寺田選手と果緒ちゃんが好きな食材。
・タコと厚揚げの中華炒め=とろみをつけてごはんにかけて食べられるように。

日本選手権後(7月7日~)

<ポイント>
 五輪を前にトレーニング強度を上げていく時期。体重を少々増やすため、食が進み、疲労回復効果も期待できるものとして酸味のあるものを多くリクエストされた。

廣松さんが作った日本選手権後の食事

・梅とシラスの青のり混ぜごはん=梅でほんのり酸味を出し、米を食べやすいように。シラスからはカルシウム補給。
・トウモロコシと豆乳のポタージュ=旬の味で糖質が摂れるトウモロコシをスープに。
・豆苗、ツナとパプリカのパスタサラダ=麺でしっかり糖質補給。
・大根とキュウリの梅あえ=梅の酸味と塩昆布で味付け。
・手羽元のレモングリル=ハーブをきかせて香りから食欲をわかせる。
・アボカドとサーモンのサラダ=低温調理をした手づくりサラダフィッシュ。ジャガイモをここからも糖質補給。アボカドやナッツからはミネラル補給。
・肉豆腐=寺田選手が好きなネギとしらたき入り。
・ホウレン草とアサリのゴマあえ=アサリから鉄補給。桜エビも散らしてカルシウム補給。
・ゆかりなんこつ=味付けを変えてなんこつを提供。
・豚肩肉のトマトカレー煮込み=これもごはんにかけて食べられるように。野菜も入れてローリエも使用。
・フルーツゼリー=ゼラチンを使って関節強化。

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