<競泳:ジャパン・オープン>◇最終日◇7日◇東京アクアティクスセンター◇女子50メートル自由形決勝

池江璃花子(20=ルネサンス)が、白血病からの復帰以来初の表彰台に上がった。50メートル自由形で予選は25秒06の全体1位で通過。決勝は24秒91とタイムを上げて2位に入った。復帰後初の優勝まで0秒16差。オリンピック(五輪)本番会場での初レースで、しびれるような勝負を展開した。東京五輪挑戦には慎重な姿勢を示したが、レースにおいては「次は1番を狙いたい」と宣言。負けず嫌いの20歳に火がついた。

女子50メートル自由形決勝を終えタイムを確認する池江(左)。右は優勝の大本(撮影・鈴木みどり)
女子50メートル自由形決勝を終えタイムを確認する池江(左)。右は優勝の大本(撮影・鈴木みどり)

もう出遅れない。池江は浮き上がって3番手につけた。泳ぎの技術で先行する左の五十嵐、右の大本に迫る。「ラスト10メートルで大本選手が見えた瞬間、体が固まった」。自己記録で優勝した大本に0秒16届かず。復帰後初の表彰台で「成長を感じられた。でも2番。中途半端。次はバシッと決められるように。次は1番を狙いたい」と力を込めた。

五輪会場で初のレース。予選は全体トップの25秒06。目標だった25秒3台をクリアして、両手で顔を覆って涙。「1番通過でうれしかった」。勢いのまま、決勝で自身の日本記録24秒21に0秒70差とした。西崎コーチは「いい意味で予想を裏切ってくれる」。レースこそが池江の輝く場所だ。

女子50メートル自由形で2位の池江(左)は表彰式でメダルを手にする。中央は優勝の大本、右は3位の五十嵐(日本水泳連盟提供)
女子50メートル自由形で2位の池江(左)は表彰式でメダルを手にする。中央は優勝の大本、右は3位の五十嵐(日本水泳連盟提供)

白血病の診断を受けた19年2月8日から2年。入院中は体重が最大で15キロ落ちた。昨年3月にプールに入って徐々に練習再開。最近はバランスのよい3食+補食を意識する。これまでは油ものを食べると次の食事が食べられないこともあったが「おかわりもするようにしています」。体重は昨年5月から6キロ増。「体重が戻ってきて飛び込んでから最初の15メートルが速くなった」と池江。「練習再開から1年もたってない中で、自己ベストまでコンマ何秒の世界に戻ってこられたのは、ものすごくうれしいこと。さらに上にいけるようにしたい」。

女子50メートル自由形決勝で勢いよく飛び込む池江(撮影・鈴木みどり)
女子50メートル自由形決勝で勢いよく飛び込む池江(撮影・鈴木みどり)

現時点で50メートル、100メートルの自由形で代表選考を兼ねた日本選手権の出場資格が確実。ただ「五輪を目指してやっているとはいいきれない。体調とも向き合って焦らずやっていきたい。日本の中で競うレースをしても世界では勝てないので」と冷静。一方で今年の目標は明確に掲げた。「今年は50メートル自由形で王座奪還が目標です。登りつめたい」。伸びていくタイムにも一喜一憂はしない。まずは競技の原点である、1等賞を狙っていく。【益田一弘】

池江の復帰後の全成績と50メートル自由形の自己ベスト
池江の復帰後の全成績と50メートル自由形の自己ベスト

◆東京五輪の代表選考 4月の日本選手権決勝で日本水連が定めた派遣標準記録を切って2位以内に入った選手が内定。女子50メートル自由形の派遣標準記録は24秒46。池江の日本記録は24秒21。同100メートル自由形は個人種目2枠とリレーメンバー4枠の選考を兼ねる。派遣標準記録は個人が53秒31、リレーが54秒42。池江は1月の北島康介杯で55秒35で泳いで4位。

◆池江の次戦 東京都オープン(20、21日、東京辰巳国際水泳場)で本命のバタフライを“解禁”する。50メートル、100メートルにエントリー。「自信は正直ないですけど、自分なりに精いっぱい泳げればいいかな」

(2021年2月8日、ニッカンスポーツ・コム掲載)