日本で最古の農業高校である宮城農(宮城)が、11月に行われたお米の全国大会「第14回あなたが選ぶ日本一おいしいお米コンテスト」の高校生部門で最優秀金賞を初受賞した。コロナ禍で田植え作業が遅れたが、生徒と教員が一体となった米作りが結実。勢いに乗る農業科は、おいしいお米で部活動に励む選手の体づくりをサポートする「宮農おむすびプロジェクト~おコメで部活動応援~」を計画している。

「第14回あなたが選ぶ日本一おいしいお米コンテスト」で最優秀金賞を受賞した農業科の生徒たち。休校を乗り越えて初の栄冠を手にした(提供写真)

うし部特製の牛乳も参加

「モォ~!!」。今年の干支である牛の鳴き声とともに、牛舎に明るい笑い声が響いた。牛の世話をする宮城農・うし部の生徒たちの声だ。部長の米谷和華(ののか)さん(2年)はトウモロコシを発酵させたエサをやりながら「このエサにしてから乳量が出るようになったんです。この部に入ってから牛のかわいさを知り、夢中になってしまっています」と笑った。

今月に出産を予定しているスピニー(メス2歳)と一緒に写真に収まる「うし部」の生徒たち

“牛の美女コンテスト”とも呼ばれる「全日本ホルスタイン共進会」への出場を目指し、部員たちは理想体型に近づけるためのエサやりや、ブラッシング、歩行練習などを行っている。搾乳された乳は「MIYANOU MILK」として県内ジェラート店で限定発売され、人気を呼んでいる。

日本で最古の農業高校

1885年(明治18)、文部科学省指定の農業経営者育成高等学校として設立された宮城農は、「自然を愛し、心身ともに健康でたくましい生徒を育てる」を教育方針とした日本最古の農業高校として知られている。約32ヘクタールある校内には、水田や畑、果樹園や家畜舎、実習棟、販売所が併設。部活はインターハイ出場のウエイトリフティング部、相撲部、ボクシング部などが盛んで、新グラウンドと専用ブルペンを備えた野球部は古豪ファンに愛されている。

そんな部活の選手たちを支えようと、農業科の佐藤淳教諭がある計画を発案した。題して「宮農おむすびプロジェクト~おコメで部活動応援~」だ。

初の最優秀金賞に輝いた「東北194号」。炊き上がりの香りと色つやに優れ、粘りは控えめで、あっさりとした食味が特徴的なササニシキ系のお米だ(提供写真)

お米と地元食材の組み合わせ

「昨年、お米の全国大会と言われる『第14回あなたが選ぶ日本一おいしいお米コンテスト』で、我が校で作ったササニシキ系の品種「東北194号」が初めて日本一(最優秀金賞)を取りました。感染拡大の影響で、田植えと休校が重なってしまいましたが、教員が代役を務めたり、田植え時期を遅らせたりしてピンチを乗り越えました。日本一になったお米と、地元の食材を生かしたおむすびを作り、部活の選手たちに補食として食べてもらおうと思っているんです」と話す。

休校で田植え作業の時期が遅れたが、6月に分散登校が始まり作業を再開できた3年生たち(提供写真)

現在考案中なのは、名取市の名産「北限のしらす」や、三陸地区のワカメを混ぜたミネラルたっぷりの「海おむすび」。良質なタンパク質を摂取できる青ばた豆入りの「豆おむすび」。ビタミンと鉄分豊富な大葉と仙台みそをぬった「みそおむすび」など。実際に選手たちに食べてもらい、体重や体脂肪データを取りながらアスリート向けに改良していきたいと考えている。

「お米の力を見直そう」

佐藤教諭が伝えたいのは「宮農産の農作物や牛乳で部活を盛り上げたい」という願いと、「お米の力を見直そう」という農業教育の思いだ。

コロナ禍による大会中止が続いた農業科の3年生だったが、最後に「日本一」を受賞し有終の美を飾ることができた(提供写真)

「最近、糖質ダイエットがブームとなり、お米は『太る要素』とか『避けるもの』のイメージが先行してしまっている。お米の正しい栄養を知って欲しいし、高校生の体づくりにも良いんだということを再確認してもらいたい。宮農のお米がその一役を担ってくれたらうれしいですね」。

ウエイトリフティング部の佐藤和夫監督、野球部の赤井沢徹監督などには提案済みで、早ければ今春にもスタートする予定。酪農担当の渥美勇人教諭も「ぜひ。うし部特製の牛乳も選手たちに飲んでもらいたい」と賛同している。

うし部が開発した「MIYANOU MILK」はフレッシュな甘みとコクが魅力で、限定発売すると即日完売するほどの人気商品だ

東日本大震災では、津波で校舎が全壊するという悲しみを味わった宮城農。2018年に現在の名取市高舘吉田に新校舎が移転し、一から田畑の土づくりを行ってきた。佐藤教諭は「生徒たちが丹精込めて手入れしてきた田んぼで作ったお米が日本一になって感慨深い。ここから日本一の選手が生まれるよう、部活と農業で最強タッグを組んでいきたい」と意気込む。2011年3月11日の震災からもうすぐ10年。復興した姿と感謝の思いを、農業と部活の力で発信していく。【樫本ゆき】