復活の一因は「大人の自覚」にあり-。

フィギュアスケート女子で11月のグランプリ(GP)シリーズ初優勝を飾った坂本花織(20=シスメックス)が10日、神戸市内で公開練習に臨んだ。神戸野田高に在籍していた18年は平昌五輪6位、全日本選手権初優勝と躍進。だが昨季は全日本選手権6位など、苦しいシーズンを過ごした。

練習を披露する坂本花織(代表撮影)
練習を披露する坂本花織(代表撮影)

この日、幼少期から指導してきた中野園子コーチ(68)は復活の理由を問われ、まず最初にこう言った。

「今年から1人暮らしをして、自立しているので、いろいろな意味で、今年は少し違うんだと思います」

神戸学院大2年の坂本は今春から、1人暮らしを開始。運転免許を19年12月に取得し、自らの運転でリンクに向かっているという。毎週火曜日の朝練習はオフとし、中野コーチは「『何してんの?』と聞いたら『1週間分のごはんを作っている』と言っていました」と明かした。

坂本は「たまに味が爆発する」と大笑いだったが、得意の西京焼き、卵焼き、豆腐料理など、レパートリーは豊富なようだ。トマト、モッツァレラチーズを買い込み「カプレーゼ」を作るなど、栄養のバランスを常に考えながら、キッチンに立つ。

練習を公開した坂本(代表撮影)
練習を公開した坂本(代表撮影)

欠かさないのは1日1時間のランニング。いつも辛口な中野コーチも「だいぶ大人になったと思います」と口にする教え子の変化だが、その一方で「気を許すと、大変なことになりますので」と笑った。

ランニングの状況はGPS機能を用いたアプリでグレアム充子コーチ(61)へ送られているといい、中野コーチは「全部ルートも出ますし『ここ休んだ』とか、1キロ何分で走っているとか、全部出ます。抜け目はありません」。自主性と管理が絶妙なバランスとなっている。

新型コロナウイルスの影響で、普段は転戦している国際大会がなくなった。昨季は周囲のライバルに意識が向き、考え、結果的に自分の演技が崩れた。コロナ禍だからこそ、腰を据えて取り組む成果が表れやすいと分析する。坂本は言う。

練習前に談笑する坂本花織(右)と三原舞依(代表撮影)
練習前に談笑する坂本花織(右)と三原舞依(代表撮影)

「ライバルがみんな海外に合宿に行ったり、誰々先生に習ったり…とかあったんですけれど、今年はみんな、そういうのがなかったし、ある意味フェアなので。そこで自分がどれだけ頭一つ抜けられるか。『チャンスなんじゃないかな』と思えるようになりました」

次の照準は2年ぶりの優勝が懸かる全日本選手権(25~27日、長野)となる。その表情は充実している。

「NHK杯以上の演技ができるように。練習をしっかり積んで、自信を持って全日本に行けるようにしたいです」

後悔のない準備を施し、最高の状態で長野のリンクに立つ。【松本航】

(2020年12月11日、ニッカンスポーツ・コム掲載)