日本体育大学健志台合宿寮(横浜市)は14部会、学生450人が生活しています。その食堂はトップアスリートと指導者に必要な「食の管理」を学ぶ場でもありました。

コロナ禍で食堂もソーシャルディスタンス。透明の囲いで対策していた

どの種目にも対応できるよう品数多く

午後8時、練習を終えた野球部の選手たちが健志台合宿寮の食堂に集まってきた。入り口には、主菜A、B、C、副菜A、Bが並び、選手たちはそれぞれ、トレーに好きなものを選んでいく。ご飯、汁物はおかわり自由。牛乳、100%のオレンジジュースは飲み放題。選手たちは次々とおいしそうに平らげた。

夕食は主菜A、B、Cと副菜A、Bが並び好きなものを1品ずつ選べる

健志台合宿寮は14の運動部、約450人の選手たちが生活している。食堂も朝、昼、晩とフル稼働。株式会社ファインフードシステムズの料理長・浅沼優一さん(61)は「少しでも出来たてで温かいものをおいしく食べて欲しい」と各部会の活動時間と部員の人数に合わせ作るように工夫。どの種目でも対応できるよう、昼夜、主菜は3品、夜は肉類、魚や卵とじや丼ものに麺類の3品。副菜は2品を用意。選手はそれぞれ選ぶことができる。

ホワイトボードには今週の献立とエネルギー、糖質、タンパク質が書き込まれている

今年、母校の日大三で保健体育の教育実習を終えたばかりの宮木紳道外野手(4年)は「野球部員として1日をどう乗りきるか。1日のエネルギーを摂取しつつ、栄養の偏りがないように選んでいます」と話す。野球部員の主菜の選び方のポイントはタンパク質だ。

「炭水化物は1日を乗りきるためのエネルギー。脂肪を燃焼し、タンパク質を取り入れることによって筋肉になる。ご飯でしっかり炭水化物。おかずはできるだけタンパク質が高いものを取り、効率的に体作りをします」。なるほど、選手たちはメニュー表に書き込まれたタンパク質が高い料理のお皿を選んでいた。メニューを作成している管理栄養士の茂呂真弓さん(52)は「メニューは高タンパクで、カロリーは抑えるように、肉は必ず油抜きをしてから調理。揚げ物は良質な油を使用。1日30品目を摂取できるよう作っています」と選手たちの高い目的意識に応えている。

今年、中日にドラフト2位で指名された森博人投手(中央)も、自分に必要な主菜、副菜を選んでいく

最終的な判断は選手に任される。「自分の体を考えている選手は、自分の趣向よりも、自分の体に必要な料理を自然と選んでいますね」と宮木。今年、中日にドラフト2位で指名された森博人投手(4年=豊川)も「自分が目指すところが見えたら、食生活が変わった」と食事が成長を後押しした。

自己管理できた選手が強くなれる

選手たちの意識の高さは、自分の体を理解することから始まる。週に1度、体重や筋肉量を計測し学生コーチがデータを管理。これまでプロ入りした先輩たちのBMI値、筋肉量などのデータも部内で公表され、自分がどれくらいの数値になればプロを目指せる体になれるのか、活躍できるかが目安となる。年に1度、栄養士の講習も受講し知識を深めていく。

飲み放題の100%のオレンジジュースからはビタミンCを。牛乳でカルシウムを摂取

昨年からは練習終了時間をこれまでの午後8時から30分早め、夕食をゆっくり量も多く取れるようになった。体育大ならではの徹底した指導が選手たちに浸透し、今秋のリーグ優勝につながった。

古城隆利監督(51)は「環境を与え、やるかどうかは本人次第。意識を高くもち、それぞれが目指すところに近づいて欲しい」と話す。卒業間近の宮木も「知識も増えそれを活用できる環境がある。だからこそ、自己管理ができたヤツは強くなれる。それはこれからの先の人生でも生かせる」と充実した4年間を振り返った。知識と体を成長させる環境が、選手を大きく育てている。【保坂淑子】

(2020年11月23日付、日刊スポーツ紙面掲載)