新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛で、客数減に見舞われている立ち食いそば業界で、打開策への動きが出ている。

大手立ち食いそばチェーン「名代富士そば」(本社・東京都渋谷区)は29日、コロナ禍で増えた筋トレ族を念頭に「筋肉もりもりそば」(税込み680円)を、11月6日から都内2店舗で発売すると発表した。

富士そばが都内2店舗で11月6日から販売する「筋肉もりもりそば」
富士そばが都内2店舗で11月6日から販売する「筋肉もりもりそば」

穀物の中では唯一そばに含まれるポリフェノールの一種、抗酸化物質「ルチン」が、筋肉増強や代謝アップを助ける成分であることに注目。アスリートフードマイスターとして活躍する今野善久さんに監修を依頼し、「筋トレサポートそば」として完成させた。そばによる筋力アップを目指すとしている。

コロナ禍では、成人の6割が筋力ダウンを実感したとの調査もあるという。筋肉量を増やすにはタンパク質と抗酸化物質の摂取がよいとされる中、ルチンを含むそばに、タンパク質がサーロインステーキ並みで、ささみ以上の低脂質という「やげん軟骨」の素揚げを100グラム乗せた。栄養のバランスと相乗効果を考え、ほうれんそう、大根おろし、すりごまもたっぷり。大根おろしは熱に弱いため、つゆは「ぬるめ」にこだわったそうだ。

今野さんは「タンパク質だけ取っても筋肉は十分に育たない。ルチンはアミノ酸との相性も良 く、ルチンと栄養素を組み合わせることで筋肉増強の効果を出すことができる」と話した。

立ち食いそばといえば「駅近・24時間営業・多くのターゲットは男性ビジネスマン」が定番スタイルだが、コロナ禍によるテレワークの増加で、業界の状況は一変。有名店や繁盛店でも閉店に追い込まれるケースが出ているという。

19年は売り上げ107億円を記録した「名代-」でも、緊急事態宣言後の今年4月、5月の売り上げは昨年の4割に落ち込み、9月でもまだ7割強だ。「筋肉」のように、機能性に特化した商品の展開は初めて。担当者は「筋肉もりもりそば」について「価値とニーズで需要があると思っている」と話した。コロナ禍以降、女性のひとり客も増えているといい、新たな女性客獲得に向けたチャンスともとらえている。

当面は、トレーニングジムの利用者が多いとされる渋谷と池袋の2店舗で販売する。来春以降、全店舗での販売も視野に入れる。

(2020年10月29日、ニッカンスポーツ・コム掲載)