「体は食べたものでできている」。現役時代からこの言葉を常に念頭に置き、食事について考えることは多かった。子供を育てる身となった今ではさらに「食」への意識が強くなった。

自分が食べるもの以上に娘が口にするものに関しては注意するようになり、それと同時に自分や夫も元気に過ごせるように食事を考えるようになった。

食事で家族の健康を守ることへの意識から、本やネットなどでも「食」について調べることが増えてきた。最近読んだ本の中で、脳内でホルモンが分泌して快感を得る味覚の報酬回路には、「砂糖」「油脂」「うまみ」の3つがあることを知った。

選手時代、海外での食事
選手時代、海外での食事

それらには依存性があり、食べ続けるとその味が忘れられなくなるという。 「砂糖」や「油脂」については私も知っていたが、「うまみ」にも依存性があることは初めて知った。

みなさんも生活する中で甘いものが食べたくなったり、揚げ物などの脂っこい物が食べたくなることがあると思う。それと同時に、出汁の効いた温かいみそ汁を飲んでほっとした経験もあるのではないだろうか。

私は現役時代によく海外へ行っていたが、現地での食事はいつも3日で飽きてしまい、試合の緊張を感じたり疲れた時には特にみそ汁が食べたくなった。そのため海外遠征にはみそ汁が欠かせなかった。今思えばすでに私も「うまみ」のとりこになっていたのだろう。

「砂糖」や「油脂」も成長する過程では大切なエネルギー源ではある。しかし、食べすぎると肥満や生活習慣病につながってしまう心配がある。

そのため子供の食事を管理する母としては、なるべくそれらを控え、「出汁」の効いた食事で子供の舌を作っていきたい。それが子供の将来の健康を作ることに繋がると知ることができたのは、とても大きな収穫だった。

1日1食は出汁の効いた和食を

昔から受け継がれてきた日本食の多くには出汁が使われている。

幼いころから和食をしっかり食べることによって、知らず知らずのうちに和食を好むようになり、将来の健康へと導いてくれる最高の食事だということを改めて感じた。

きっと昔の人が健康で長生きなのも和食が関係しているに違いない。そう思うのは私の祖母が卒寿を迎えても毎日ピンピンと元気に過ごしているからだ。そして、祖母の作る料理は和食が多く、出汁がしっかりと効いているのも昔から変わらない。

和食は世界的にも健康食として注目されている。ただ、さまざまな国の料理を手軽に食べられる日本だけに、3食全て和食というのはなかなか難しい。それでも子供の一生の食生活が幼いころの味覚で決まってしまうと思うと、1日最低1食は出汁の効いた和食を食べさせたい。

日本の伝統ある素晴らしい食文化が、子に、孫に、受け継がれるよう、「食」で家族の健康を守っていきたいと思う。(中川真依=北京、ロンドン五輪飛び込み代表)

(2020年8月5日、ニッカンスポーツ・コム掲載)