「舌」からプロ野球を盛り上げる。楽天は7日から「選手プロデュース弁当」のデリバリーを仙台市内限定(一部地域を除く)で行っている。
製造、配達を担うのは、今年で創業100年を誇る弁当会社「こばやし」。小林亜星氏のキャラクターで仙台に根付いている。新型コロナウイルスの影響で苦境に立つ老舗が抱く思いとは-。
3月下旬。楽天からこばやしに連絡が入った。「お弁当のデリバリーをやりませんか?」。球場限定だった販売許可の拡大を申し入れられた。担当者は「ファンの方々に少しでも雰囲気を味わってもらえたら」と受諾。11日から配達を始め、15日現在で約1100食の注文を受けている。
1920年(大9)創業。球団創設2年目から選手弁当の製造を担う老舗にも“コロナショック”は大打撃だ。開幕前に選手がデザインされた包材を約10万食分発注。4月末までに想定していた約3000万円の売り上げにメドが立たなくなった。
困難は幾度も乗り越えてきた。45年の仙台空襲で本社と工場が全焼も、翌年に営業を再開。2011年3月11日の東日本大震災で被災も、プロパンガス、貯水タンク、発電機などの備えを稼働させ、翌日から再開。自衛隊などへ常温の食材を詰め合わせた「災害用弁当」を卸した。
今回は特に厳しい。イベント、学会などは軒並み中止。緊急事態宣言の発令から東京、上野など都心の駅への駅弁注文もなくなった。「震災時と比べても需要がないので、なお厳しい状況です」と担当者は話す。
ただ、そんな苦境でも、消費者の声は希望の光となっている。注文フォームに設けたコメント欄には「企画してくれてありがとう」「球場には行けないけれど、家族みんなで食べます!」などのメッセージがあふれる。注文は配達日の3日前、5個から受け付け、配達期間はプロ野球開幕前日まで。スタジアムで食べる弁当は本当にうまい。球音と歓声が響くまで、思いを運ぶ。【桑原幹久】
(2020年4月17日、ニッカンスポーツ・コム掲載)