今回取り上げるのは、美里工(沖縄)野球部です。食トレの中心は、選手各自が持ち寄る具材で作る朝食の「特製具だくさんみそ汁」。“同じ鍋のみそ汁”を飲んで、絆とチームワークを深めています。もう1度甲子園への思いを込めて、16日から全体練習を再開したそうです。

自慢の大鍋を囲む美里工の選手たち。年に数回、この鍋で、お昼にカレーやシチューも作る
自慢の大鍋を囲む美里工の選手たち。年に数回、この鍋で、お昼にカレーやシチューも作る

2度目の甲子園目指して

朝6時。まだ薄暗い中、グラウンド横に設置された190リットルガス回転釜に火が入る。この日の食事当番の選手は5人。鍋に湯が沸き始めたころ、部員たちが登校してきた。手には、それぞれビニールの袋半分の野菜(大根、レタス、ニンジン、白菜、タマネギ、ジャガイモ)。他に油揚げ、キノコ、卵を持ってくる部員もいる。野菜は、すぐに調理できるよう、カットされている。食材を当番へ渡すと、選手たちはすぐにバッティング練習を始めた。

当番の部員たちは暗いうちから食事の準備。時には豆腐を持ってくる選手もいるため、カットして入れる
当番の部員たちは暗いうちから食事の準備。時には豆腐を持ってくる選手もいるため、カットして入れる

選手が持ち寄ったビニール袋から、具材をどんどん投入していく
選手が持ち寄ったビニール袋から、具材をどんどん投入していく

「カキーン!」心地よい打撃音を背に、当番の選手たちが、部員各自が持ち寄った野菜を鍋に投入。みるみるうちに鍋は野菜いっぱい。最後はみそとかつおだし。そして、隠し味のニンニクを少し入れ「美里工特製・具だくさんみそ汁」が完成した。

完成した具だくさんみそ汁。選手が持ち寄る具材は、各家庭によって切り方も様々でいい味を出している
完成した具だくさんみそ汁。選手が持ち寄る具材は、各家庭によって切り方も様々でいい味を出している

朝食べないと効果が出ない

選手全員で朝食にみそ汁を飲むようになったのは6年前の春。センバツ初出場を果たした後のことだった。

神谷嘉宗監督(64)は「公立高校でグラウンドが他の部活と共用だから打撃練習は朝しかできない。うちは寮がないので、遠くから来る子は朝4時ごろに起きて登校するので、朝食を食べてこないのです。いくら食トレをやっても、朝を食べないから効果が出ないし遠征に出ても食が細い。それで朝食しかない、と思ったのです」と振り返る。

容器にみそ汁をよそう選手たち。食事当番の選手によって味が薄い、濃いがあり、同じみそ汁でも毎日違う
容器にみそ汁をよそう選手たち。食事当番の選手によって味が薄い、濃いがあり、同じみそ汁でも毎日違う

何かいい方法はないかと模索していたところ、近所の海産物直売店で、お祭り用に使っていた業務用の鍋に目がとまった。「これはいい」と早速購入しグラウンドに設置した。

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