東京アクアティクスセンターで4月2日に開幕する競泳の日本選手権で、800メートルリレーの東京オリンピック(五輪)代表入りを狙う吉田冬優(ふゆ、22=明大4年)は、ジュニア時代から注目されていた逸材だ。食事についても、ナショナルチームの講習で栄養講座を受け、基本的な情報は耳にしていた。

母梅子さん(63)も独学ながら、アスリートに必要な栄養素がとれる食事を意識して作ってきた。吉田は大学入学後も寮に入らず、補食を含めて1日4食、家庭で食事をとってきた。

メインは昼食、豊富な品数

普段、梅子さんが最も力を入れるのは昼食。吉田が朝の練習から帰ってきて食べる1日のメインとなる食卓作りだ。品数が豊富で量もありながら胃にもたれず、ご飯も進む。

取材時の昼食メニュー。主菜はすき焼き風牛煮込みとサケの塩焼き。納豆に温泉卵も用意されていた。ご飯は通常は400gだが、試合前後で調整。米は磐田産
取材時の昼食メニュー。主菜はすき焼き風牛煮込みとサケの塩焼き。納豆に温泉卵も用意されていた。ご飯は通常は400gだが、試合前後で調整。米は磐田産

吉田は外食もほとんどしない。たまの外食時でも帰宅後、サラダなどとれなかったものを食べる。「1番安心できるのがうちのご飯」として、梅子さんはいつでもリクエストに応えられるよう準備している。

海外遠征時の食事に対応できず

非常に恵まれた食環境だが、逆に「失敗」となり、世界で戦うための気付きにつながった。海外遠征の際、食事に適応できなかったのだ。

「食べられるものがなかったんです。でも、他の選手は、世界大会の前でもカップラーメンやハンバーガーを食べて、ベスト(記録)を出していた。買い食いをしている選手もいたけど、たくましく映った。自分にはその対応力がなかった」。

戦うには、食べるしかない。それが普段は食べない方がいいと言われているものであっても。「どっちも正解だと思った」と自分に欠けていた部分を知り、勝つために、かたくなだった意識を変える必要もあると知った。

吉田家のリビングには、吉田の数々の栄光の軌跡が飾られている
吉田家のリビングには、吉田の数々の栄光の軌跡が飾られている

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