<陸上:東京マラソン>◇1日◇東京都庁前~東京駅前(42.195キロ)

大迫傑の妻あゆみさん(31)は、7歳と1歳の娘たちと一緒に沿道で声援を送った。ゴールの瞬間を「嬉しかった」と笑顔で振り返り、日本記録を更新したタイムを知らされると「20秒も! 凄い、凄い」と喜んだ。

日本人トップでゴールした大迫(撮影・加藤諒)
日本人トップでゴールした大迫(撮影・加藤諒)

5年ほど前にアスリートフードマイスターの資格を取得。トップランナーの夫を精神面でも食事面でも支える。心掛けるのは「普通の家庭料理」。重要な大会前だからと豪華な食事を出せば、逆にプレッシャーを与えかねない。炭水化物、タンパク質、ビタミンなど栄養素をバランスよく組み合わせることを心掛ける。

レース直前の差し入れはいつもカステラだ。栄養補給に優れ、体内にゆっくりと糖が吸収されるため、スタミナの持続効果を持つ。

男子マラソン、2時間5分29秒の日本記録でゴールする大迫(撮影・河野匠)
男子マラソン、2時間5分29秒の日本記録でゴールする大迫(撮影・河野匠)

日頃の食事同様、このときも大切なのは「普通のカステラ」であること。1年前の東京マラソンでは奮発して高級仕様の商品を渡したが、初めて途中棄権に。あゆみさんは「高級カステラには風味や食感を出すためにバターがふんだんに使われることが多く、胃にもたれやすかった」と反省。その後は手頃な価格のものに戻した。この日のレース直前に夫が口にしたのも「普通のカステラです」。

自宅で夫が過ごす際はマラソンに関する話題は避け、精神的にくつろげる状況をつくることを重視する。MGC後も「(大迫)本人がどう思っているかは言わないし、こちらからも聞かない。いつも通り過ごしてきた」。日々の暮らしではぐくんできた絆の強さが、日本記録更新の源となった。

(2020年3月1日、ニッカンスポーツ・コム掲載)