<とっておきメモ>

28日に現役引退した大相撲の元大関豪栄道の武隈親方(33=境川)が29日、東京・両国国技館で会見を行った。

引退会見をする元大関豪栄道の武隈親方(撮影・鈴木正人)

大阪生まれで、寝屋川の中学校に通っていた共通点もあり、豪栄道とは“裸の付き合い”をさせてもらった。ある年の九州場所前。「いつも博多に着いた最初の日に行く店があるから来る?」と誘われた。指定された中洲の某所へ行くと「サウナに入ってから行こ」と言われて、2人そろって汗をかき、湯舟につかった。既に大関だったが、一般人の目など気にしない。おおらかな、お相撲さんそのものだった。

義理人情には本当に厚い。大関昇進直後の14年秋巡業。京都・福知山の焼き肉店で「昇進祝い」をしたことがあった。すると「借りはつくらへんよ」と言って、九州場所前に、博多で絶品牛タン串をごちそうしてくれた。紅白歌合戦出場歴のある人気女性歌手との会食を断って、記者との食事会に来てくれたこともある。「こっちの方が、先に決まってたからな」。サラリと言ってくれた姿に、男として男にほれた。今思えば、貴重なロマンスの機会を消してしまって、申し訳ないのだが…。

関ノ戸親方(左)から花束を受け取る元大関豪栄道の武隈親方(撮影・鈴木正人)

朝稽古や場所中は口数が少なく、取材は苦労した。ただ、理想の大関像については「ここ一番で自分の相撲で相手をねじ伏せるような、心の強い力士」「40歳とか、そんなに長くやるつもりはないよ」と話していたことを思い出す。

何度か共にした食事はいつも肉だったが、白飯は食べなかった。カロリーの高いビールは飲まず、酎ハイが多かった。体は常に大事にしていた。だが、度重なる骨折や、両足首、肩も痛めて、最近は満身創痍(そうい)。負けん気の強い心を保つのは、もう限界だったのかもしれない。

引退は本当に残念だが、同学年の荒磯親方(元横綱稀勢の里)が雄弁に解説する姿を見ると、今後の親方としての活躍、話術にも興味がわく。地元愛が強いのか、好きな女性論になると「(北)新地の子が、いいわ」と笑っていた。まだ独身。“嫁取り”が、いつになるか? こちらも楽しみにしたい。【12~17年相撲担当=木村有三】

(2020年1月29日、ニッカンスポーツ・コム掲載)