ラグビーの“にわかファン”が本格的なファンに変わり始めた。12日、国内最高峰のトップリーグが開幕し、埼玉・熊谷ラグビー場で行われたパナソニック-クボタの熱戦に多くの観客が詰めかけた。用意された当日券300枚は30分で売り切れる大盛況。オールドファンに加えて新規のファン層がラグビー界を盛り上げる兆しが見えてきた。

稲垣啓太(2019年10月2日撮影)

ワールドカップ(W杯)で日本中を感動させた人気選手がそろった開幕戦。熊谷ラグビー場でチケット販売を担当する山崎渉さん(52)は、観客の喜々とした表情、売り場に並ぶ長蛇の列に目を奪われた。「昨年は何枚でも当日券があったし、売り切れることはなかった」。300枚の当日券が30分で売り切れる熱狂ぶり。昨季の開幕戦では前売り券が完売した会場はなく、山崎さんにとっても想定外の光景だった。

試合が行われた熊谷ラグビー場は、最寄りのJR熊谷駅から徒歩で50分。決して交通の便が良いとは言えないが、この日登場したパナソニックには福岡堅樹、稲垣啓太、堀江翔太ら日本代表6人所属しており、多くのにわかファンの目当てとなった。

茨城から来たという吉島美貴さん(41)はラグビー初観戦を心待ちにしていた。第一声は「にわかファンです」。“笑わない男”として、テレビのバラエティー番組でも引っ張りだことなっている稲垣の名前を挙げ「体や、女性に優しいところが大好き」と話した。

同僚と3人で来たという井坂栞さん(23)は「W杯を見て、全体的な迫力や流れをみたいと思った」と話す。職場の女子同士でラグビーの会話が盛んになったといい、この日も「あの選手のここを見た方が良い」などと話し合うなど予習ばっちりで会場に向かった。

笑顔を見せる稲垣啓太(2019年10月2日撮影)

「稲垣選手は普通に笑います」。驚きの発言をしたのは、両親が群馬県太田市にある飲食店「いばら」の看板娘の奥沢聖美さん(19)だ。パナソニックの練習場が近いことから、稲垣や現キヤノンの田中史朗が週1回は必ず来店するという。稲垣は11日も昼食と夕食を食べに来たという。お気に入りのメニューは「サーモンの塩焼き」と「豚バラのしょうが焼き」だと証言した。

奥沢さんは稲垣のテレビでの様子を「堅い。普段の方が面白くて優しい」と目を細めた。稲垣が笑うかと問われると「ばか笑いはしないですけど、笑います」と暴露した。しかし、ファンに写真を頼まれると笑わないスイッチが入り「笑顔の写真は1枚もないんです」と小声で明かした。10年以上稲垣らを応援しており、今回の熱狂ぶりに「このまま、野球みたいに日本代表選手じゃなくても、知ってもらえるようになって欲しい」とほっとした笑顔で願った。【佐藤勝亮】

(2020年1月13日、ニッカンスポーツ・コム掲載)