ウエートリフティングの早大の黄金ルーキー、男子73ロ級の佐藤康太郎が、寮生活を送りながら心身ともに強さを身に付けている。埼玉・上尾スポーツ総合センターで5日に行われた全日本学生新人選手権大会で、スナッチ136キロ、ジャーク170キロのトータル306キロで優勝した。宮城農時代に高校記録を樹立したのは69キロ級。階級を上げても順調に成長している理由は、この春から始まった寮生活での自己管理にある。

新人戦で優勝した佐藤

新人戦は、元バルセロナ五輪代表で宮城農ウエートリフティング部監督の父和夫さん(49)に、自立と成長を見せる舞台にもなった。2位にトータル47キロの差をつけるダントツV。「強くなりましたね…」と、めったに褒めない和夫さんも息子を見つめてつぶやいた。

ジャーク1回目で170キロを悠々とクリアすると、2回目で大学最高記録(183キロ)に挑戦。バーベルを頭上に持ち上げる際に膝を落として体を沈み込む「ディップ」がうまくいかず、失格となったが、「公式戦でこの重量を使ったのは初。一瞬立ちくらみのようになってしまったが、あそこまで持って行けたのはいい経験になった。次は取れると思った」と自信をつけた。

実は、大会直前の練習ではスナッチで110キロを上げられないほどのスランプに陥っていた。「身体の疲労と、脳の疲労がたまっていたのだと思います。思い切って休もうと思いました」。和夫さんのアドバイスもあり、大会前の2日間、バーベルを一切握らず、フォームチェックも行わない完全休養日にした。試合当日はウオーミングアップの時まで不安はあったが、本番では持ち前の勝負強さを発揮した。

インカレには81キロ級で出場。体もまだ大きくなっている

魚は世界で1番ヘルシーな食べ物?

高校時代から体作りへの意識が高かったが、親元を離れて寮生活を送るようになってからは、自己管理のレベルをさらに上げていった。早大スポーツ科学部では「基礎栄養学を学んでいるのですが、田口素子先生(教授)の授業がとても勉強になります」と話し、食事面で工夫していることを挙げた。

「最近ハマっている」のはサバ缶だ。「タンパク質が摂れるだけでなく、良質な脂質、DHAが摂れるのがいいんです。インターネットで『世界で1番ヘルシーな食べ物は?』と検索したら『魚』と出てきたので、魚嫌いだったのを改めて積極的に食べるようにしています」。栄養バランスが整っている寮の食事に加えて、母明代さん(47)に送ってもらうサバのみそ煮缶をプラスして、パワーアップを図っている。

新人戦には母明代さん(左)、父和夫さんも仙台からかけつけた

食事に加えてサプリメントの勉強も

食事から栄養を摂ることは基本の上で、大学生になってからはサプリメントについても学ぶようになった。筋肉量の維持や増量が重要な階級制のスポーツ。佐藤は自分に合うものを試しながら「筋肥大を促し、疲労効果があると言われているクレアチンのサプリメントを愛用しています。飲んだ後に体調がいいもの、筋肉のはりに影響のないものを選んで飲んでいます」。飲み方や体への影響を十分理解した上で、食事プラスαとして活用している。

大学での食生活に不自由はないが、やっぱり恋しいのは母の手料理。仙台の実家を離れたことで、家庭のありがたさや家族のぬくもりを感じるようになったという。「家の鍋料理とか懐かしい。めちゃめちゃ食べたいですね」。感謝の言葉を口にできるように、精神的にも大人になった。だからこそ、活躍することが1番の恩返しだと胸に刻んでいる。

次の大会は3月の世界ジュニア選手権。海外での大会で食べ物が合わず、体調を崩したり、痩せてしまったりすることがないように、「日本からトラベルマルチクッカーを持って行って、ご飯やラーメン、パスタを作ります。食欲が落ちないように対策するので大丈夫です」。2024年パリ五輪出場を目指すサラブレッドは、世界でその力を試してくる。【樫本ゆき】